Hokkaido Maple House〈北海道石狩郡〉
メープルシロップで山林を守る
北海道の森林産業に貢献

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 GAGNONM(マーク・ギャニオン社長)は2023年12月10日、北海道当別町で北海道産メープルシロップを作るための施設「Hokkaido Maple House」をオープン。12月15〜19日と2024年1月19〜22日に同施設でオープンドアイベントを開催した。

 メープルシロップ専門店GAGNON(ギャニオン)は、ギャニオン氏の故郷ケベックから厳選して直輸入したメープルシロップの販売を通じ、カナダの食文化を紹介して17年が経過した。
その間、メープルシロップの販売だけに留まらず、北海道のカエデの森を活用したメープルシロップの生産や森の整備技術の指導にも従事してきた。
 そして、メープルを通じて豊かな森づくりや森との持続可能な共存を実現させ、北海道に広がる豊かなカエデの森からメープルシロップを作りたいと夢見てきた。
 製品化だけであれば簡単かも知れないが、ギャニオン氏が大切にしたいのは森への負担がかからないメープルシロップづくり。それは森を育て、環境や管理を未来に繋げる森づくりによって実現できるもの。
 昨年12月それらの想いが叶い、石狩郡当別町に「Hokkaido MapleHouse」をオープンすることができた。自然豊かな立地で、森に育つイタヤカエデをメインとした森に生育するカエデから、メープルシロップの製造を行うだけでなく、森林の手入れをする拠点としてカナダ技術者との交流や森づくりの学びの場とする予定で、道内のみならず、全国の多くの人にその活動を知ってもらい、北海道の森林産業発展の一端をメープルを通して担いたいと考えている。
 オープンドアイベントでは、特にセレモニーなどはなく、プロモーション動画の視聴に加え、ギャニオン氏が随時、森とメープルシロップ製造工場・設備を説明した。
 「カナダは、甘く美味しいシロップになる『樹液』が採取できるカエデの種類は意外に少なく、シュガーカエデ・ブラックカエデなど4種類。日本でも、全てのカエデから樹液が採取できる訳ではなく主に2種類で、モミジからも樹液を採取できるが、糖度が低くメープルシロップには適していない。この森は、およそ1km四方の大きさがあり、群生しているイタヤカエデから、2・3月に良質の樹液が採取できる」とギャニオン氏。
《GAGNONのメープルシロップ製造》
 メープルシロップの収穫は、地域によって異なり、収穫できる日も定まらないが2〜4週間と短く、自然現象を利用した収穫のため、時期・量も毎年異なる。
 夜間の気温が氷点下に下がり、日中に気温が上がることで、木の中で雪解けの水を吸い上げ、押し戻す樹液の循環が繰り返される。その循環を利用して、木に開けた穴から自然に流れ出た樹液をパイプやバケツで受けて、工場に運んでメープルシロップを、製造する。
 樹液は、劣化が早いため収穫と同時に煮詰る作業を始める。採取した翌日から作業を始めるのではない。800Lのタンクに樹液を入れて、カナダ製の専用ボイラーに流し、薪を使用して強火で66Brix(樹液は約1.5Brix)に達するまで煮詰めて漉す。火加減によって味が変わるため、弱火は不可。カナダには、電気やガスのボイラーもあり、薪の代わりにチャコールを使用しても良いが、メープルシロップの香りに変化が生じる。完成まで約2・5時間。煮詰めて水分を飛ばすことにより凝縮され、着色料・添加物を含まない100%天然のメープルシロップが出来上がる。そして、一回のボイリングが完了すると、樹液を残さないようにボイラーのパーツを外して綺麗に清掃し、組み立てて翌日の製造に臨む。前日の樹液が少しでも残っていると品質に影響する。
 樹液の採取時期でメープルシロップの種類が異なる。
採取時期初めの頃は、色が薄く繊細な味がする(ゴールデン)、時期が進むに従いシロップの色は濃くなり(アンバーマダーク)、風味が増す。
 同ボイラーは、樹液採取が始まる2月から稼働する。
 ギャニオン氏は、今後の展望を次のように語った。
 北海道メープルシロップは、将来的に「地域特産品」から「地域ブランド」にして「日本一のメープルシロップ」へと進化させたい。そのためには、高い品質を維持しながら生産量を拡大しなければいけない。
 現在、敷地内のイタヤカエデは約200本で、生産できるメープルシロップは約150Lに過ぎない。短期的な目標として、5年以内にイタヤカエデの本数を500本に増やし、メープルシロップの生産量を375Lにすること。この目標を達成するためには、地域や事業者、山林所有者、北海道メープルシロップを購入し食べてくれる人々の力が欠かせない。「Hokkaido Maple House」は、単なる製造工場ではなく、交流と情報発信の場として運営したい。
 メープルシロップの製造以外にも、北海道の緑あふれる森を活かしたアクティビティやイベントを企画している。具体的には、メープルタフィ作り体験、ガイド付きメープルの森散歩会、カナダの専門家を招聘してメープルシロップの作り方レクチャー会、社会科見学の受け入れなど。
 イベントや交流施設としての役割は、地域振興や地域経済の活性化に繋がり、参加者に森の大切さを伝え、事業者や山林所有者には「樹液」という新しい森林資源の活用方法を提案することで、北海道の森林産業に貢献したい。

【Hokkaido Maple House】
北海道石狩郡当別町708-71
【GAGNONM】
〒063-0002北海道札幌市西区山の手22条1丁目4-23
TEL011-622-8660
マーク・ギャニオン氏/1967年8月31日カナダケベック州生まれ。2007年に札幌市西区で同社設立
担当者/ギャニオン和香・山口聡子、E-mail:mail@gagnon-jp.com

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ギャニオン氏と愛犬

Hokkaido Maple House全景

カナダ製専用ボイラー