「きりん(木輪)」北九州市八幡西区
人との通い合う心を大切に
「まごころを贈る」パン屋

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オーナーの芳野栄氏

店舗外観

店内のようす

店内 左手前は屋内のカフェスペース

郷(さと)黒糖生地で求肥を包み込んだ

くるみとイチジクと赤ワイン

 福岡県北九州市のパンの「木輪」は昭和63年の創業。平成14年11月に現在地に移転してカフェスペースを設けた大型店になったが、社員の幸せを第一に考える経営理念を貫き、また、お客さまとのかかわりを大切にしながら、パンの美味しさプラス「心」を込めた店作りを心掛けている。
 オーナーの芳野栄氏は、地元の北九州市出身。大学卒業後、関西でサラリーマン生活を送るが、「起業したい」という思いを強くし、11年間勤務した会社をあっさり退職。「物を作る仕事がしたい」と、選んだのがパン屋への道。実家がパン屋を営んでいる大学時代のゼミ仲間からリテイルベーカリーを紹介され、2年間の修行の後、昭和63年9月に故郷の北九州市八幡西区萩原に「木輪」をオープンさせた。
 「経験が少ないという怖さを抱えてのスタートでした。ただ、試行錯誤を繰り返しながら、あきらめずに努力を継続してきました。人との関わりを大切にしてきたことが、現在に繋がっています」と芳野氏は当時を振り返る。
 「これからのパン屋に求められるものは『心』です」。
 創業1年後から毎月発行している顧客向け新聞「木々のささやき」は、今年11月で190号を迎えた。A3サイズ用紙1枚に新商品案内・今月の言葉・芳野氏の感じたことなどを手書きで紹介た新聞は、1400部を印刷している。店舗にも置いているが、住所を登録している顧客には、記念切手を貼った封筒で送付している。この新聞を読んだ人から、毎月80通程の感想が届くが、この全てに芳野氏は返事を送っているそうだ。
   オープンから14年目の平成14年11月、現在地へ店舗を移転。これまでの店舗は手狭だったことと、近隣住宅地の人口減少が進んでいたことからの決断だった。JR鹿児島本線折尾駅から車で10分のこの地は、道路整備が行われたことで、ここ4〜5年の間に家電量販店などの大型商業施設の進出や新興住宅地が開発され、新たな活気が生まれているエリアだ。店舗は、大通りから1本入ったところにあるが、角地であるためすぐに目に入る。
 新店舗の建設にあたっては、「お客様にほっとする空間で焼き立てのパンを味わってもらいたいと思い、屋内外にカフェスペースを設けました。
 緑の配置、和を基調とし木肌を活かした和風モダンな店舗で、和みや温かみが感じられるようにしました」。デザイナーともじっくり話し合い、希望を伝えたという。
 新店舗は規模を拡張し、売場面積10坪、厨房30坪、カフェ5坪(屋内外・10席)、従業員も増員した。顧客の大半は車での来店になると考え、駐車場は5台分を確保した。客数、売上は、従来店に比べ3.5倍の伸びになっている。
 現在、一日の平均売上は、平日約50万円、土・日・祝約60〜70万円であるという。来客のピーク時間は、パンが店頭に揃う11〜14時頃で、平均客単価は、約800円。
 『お店作りは、チームワークが大切』と考える芳野氏は、従業員に対して次の3つを実施している。 @毎朝の「15分の朝礼」。例えば、思いやりを大切にしてほしい、ということ。まず家庭、次に従業員同士、そしてお客様に対してなど。
A毎月1回「社長通信」を発行。芳野氏のパン作りにかける思いを綴り、給与と一緒に封筒に入れ、手渡しする。
B毎月1回、「行動指針表」に自己採点させる。オリジナルに作成した行動指針表(接客、職場の雰囲気作りなどに関する32項目)を5段階で自己評価させる。
 また、今月の反省点と新聞「木々のささやき」についての感想を提出させる。これには、芳野氏自らの感想を添え、各自に返信する。
 従業員に自らの思いをしっかりと伝え、顧客から「この店は温かいね」と言われるような店作りを目指している。そんなオーナーの『経営理念』の1番目には、「社員の幸せを大切にします」と書かれている。
 平成17年4月には地元の信用金庫が制定した「福岡ひびき経営者賞」を販売・サービス部門で受賞。創作パンの開発や手書き新聞など、「まごころを贈る」パンに対する芳野氏の姿勢が評価された。
 最後に芳野氏に、これからの抱負を伺ってみた。
 「まず自身の経験から、これから今まで以上に人材育成に力を注いでいきたいと思っています。来年4月から、開業希望者を対象に、製造・販売・経営までの育成を行っていきます。毎年1名を受け入れ、ひとりにつき8〜10年をかけたいと思っています。
 それから、創業100周年を迎えることが目標です。お客様の役に立ち、必要とされ、愛されないかぎり100年という歴史を重ねることは出来ないでしょう。
 自分本位でなく、世のため、人のためにという創業者の思いが後世に伝われば、時代が変わったとしても、屋号・考え方・社風は残るでしょう。だから、いま多くの思いを伝えておきたいのです」。
 これからも年を経るごとに年輪を重ね、やがて大樹へと、さらなる成長が期待される言葉だ。
 商品アイテムは、ブレッド系29種、フランスパン系10種、菓子パン系30種、サンド系11種、調理パン系18種、デザート系10種、クッキー等焼き菓子8種。
 人気商品は、切り株をイメージした丸形食パン=210円、モッツアレラチーズと生ハムのバゲット=273円、郷(さと)=137円、山芋ちりめん=126円、くるみとイチジクと赤ワイン=320円。  販売形態は、店舖92%、配送5%、宅配3%。
 店内のディスプレイは、デザイナーに委ねて年5回(春・夏・秋・クリスマス・正月)変更し、季節感を出している。
 化粧室内は、従業員のアイデアを取り入れた小物などを配置。
 主な設備はオーブン=2台(4枚差し×3段・固焼き専用1台、4枚差し×4段・その他パン用1台)、ミキサー=SKミキサー2台(90コート1台、50コート1台)など。
 従業員数は正社員16人、パート10人。
【木輪】
〒807-0856福岡県北九州市八幡西区八枝3丁目10-1、TEL&FAX093-693-8966、営業時間7時〜19時、定休日毎週火曜日 ホームページhttp://www.kirin-pan.com
ベーカーズタイムス2006.12.10号掲載

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切り株をイメージした丸形食パン

屋外に設けられたカフェスペース

毎月発行の「木々のささやき」