新しいコンセプトでパンの食文化を深めていく
「神戸屋フォーニル」成城店
南仏・南伊の食思考を多彩に提案 コンセプトは「地域の共同窯」

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店長の中元卓司氏



神戸屋フォーニルの外観
 

販売形態は対面販売に戻した

地域の共同窯を支える戸倉のオーブン

自家製酵母で作った同店のお薦め商品。左からセイグル(¥560)、チャバタ(¥360)、トゥルト(¥2,000)

 1982年、成城で誕生した「神戸屋キッチン」1号店が、25年の歳月を経て、全く新しいコンセプトを持った「神戸屋フォーニル」として生まれ変わった。
 「フォーニル」とはフランス語で『村人たちの共同窯』のこと。南フランス・南イタリアの食思考を採り入れながら、新しいパン食のスタイルを多彩に提案していく。

 小田急線「成城学園前駅」南口から直ぐの所にあった神戸屋キッチン成城店を、神戸屋フォーニル成城店としてリニューアルオープンしたのは昨年の12月1日。
 今回の新業態店「神戸屋フォーニル」の出店経緯を、M神戸屋レストラン関東事業部業務2課課長の山崎利伸氏は次のように話す。
 「ずいぶん前から、時代に合わせた新しい展開をしたいと模索を続けていました。パンの歴史を振り返ると、基本的にハムや肉に合うパンが中心です。これだけ健康への関心が高まり、少子・高齢化を迎えている現代社会においては、きっとシーフードを中心とした食生活が求められていると考えたのです」
 同社では、桐山健一社長の指示のもと、様々な国のパン食を研究し、南フランス・南イタリアの食思考に辿り着いたのだという。
 「実際にその土地の食文化を体験する為に、半年間アパートを借りて滞在しました。ニースのベーカリーに入らせてもらって、パンづくりも勉強させてもらいました」と話す中元卓司店長は、同社で20年の経験を持つ技術者だ。
 「実際に海外で生活するのは初めてだったので最初は戸惑いはありましたが、そこで暮らしてみると本当にパンがおいしい。シーフードと非常に良く合うのです。これを何とか日本に定着させたいと思い、その店で色々なことを勉強させてもらいました」
 今回、神戸屋フォーニルが新しく採り入れた製法は同社では「トラディショナル・リバー・メソッド」と呼んでいるもので、小麦粉を充分水和させて種を作り、これを毎日起こして使用する自然種の製法だ。種の管理は愛工舎製作所のルバンで行っている。
 「今までは香りを大切にしてきましたが、今回はそれにプラスして、風味を一層重視しています。全品冷蔵発酵、前日仕込みを行っています」(中元店長)
 同社では、嗅覚だけで感じるのが香りで、食べた時に鼻に抜ける美味しさ、味覚と嗅覚の両方で感じるのが風味だと捉え、『パンと料理の相性はパンの風味から生まれる』との考えに至ったのだという。そして、パンの風味を生み出すことに力を注いだ結果、『トラディショナル・リバー・メソッド』という製法に辿り着いたのだという。
 自然種を使用すると日本人が嫌う『酸味』が出過ぎる、風味を追うと『えぐみ』が出るという難点も、この製法で解決できたという。
 同店のアイテム数は約70種類(内半数がハースブレッド)で、その全商品をこの製法で作っている。(基本的には自然種100%、デニッシュ系は一部自然種を加えて、イーストを併用)リニューアルを機に洋菓子部門は生をやめ、焼き菓子のみにし、パンも全商品を入れ替えた。神戸屋キッチンの時に顧客から支持を受けていた売れ筋商品は3割程度残したが、その商品も、新しい製法に切り替えて製造しているという。
 「刺身をオリーブオイルで食べるようなメニューに合うパンを提案していきたいんです。ですからサンドイッチも、挟む食材に鰯やイトヨリを使ったりしています。肉との組み合わせでは連食が出来ませんが、シーフードとなら可能です」
 プライスカードには四季に合わせた地中海料理が紹介され、料理との相性を提案している。もちろん、試食の際も、一番おいしい状態でパンとの相性を味わって頂きたいと、バジルオリーブやガーリックオリーブをパンに付けた状態で提供している。
 「一番肝心なのは生地の管理。それがしっかり出来る人間を育てていくことが重要です。現在、5人目がニースで研修を行っています。できれば年内にもう1店、出店できればと考えていますし、将来的にはレストランとの併用も検討しています」(山崎課長)
 リニューアル後はハード系が飛び抜けて売れるようになったそうで「店のイメージと共に、風味にこだわっている点がお客様にも分かっていただけてきたのでは」と山崎課長は分析する。
 人気商品は、自家製酵母を使い小麦の風味を最大限に引き出したトゥルト2000円(2kg)、軽い食感と独特の風味を持つセイグル560円、チャバタ360円、全粒粉のバタール250円など。
 客層は比較的年配が多く、土・日の午前中にはブランチとしてサンドイッチを購入していく人が多いという。客単価は約900円。現在の日商額は約60万円で、月額の目標を約2千万円に設定している。
 リニューアルを機に、神戸屋キッチンの時代に一旦セルフに変えていた販売形態を、再度、対面販売に戻した。設備も大幅に入れ替え、中心となる『地域の共同窯』には、戸倉商事のオーブンを2台(1台は御影石床の4段オーブン)据えた。「セーグルなどのパンは、石床の下火パワーでぐっと上げた方が美味しいと思います」(中元店長)
 また、フレッシュにもこだわり、欲しい時に生地を出して即焼けるようにと、ベーカーズプロダクションのドウコンを4台設置。生地玉で管理している。
 「商品的に窯で時間を取られますから、仕込みの時間と人員を減らしたい。それで、設備も大幅に入れ替えました」(山崎課長)
 営業時間は8時〜21時で、朝の開店時には大半のパンを焼き上げ、最終は19時まで焼成している。
 店舗面積は約28坪。今回のリニューアルでは、設備や内装を含めて、約5千万円の投資を行った。
 最後に山崎課長は、神戸屋フォーニルの今後の展開を次のように話した。
 「この店は南フランスをイメージし、成城という地域の共同窯でありたいという願いを込めて作りました。
今後は、お客様のキッチンとして親しまれている神戸屋キッチンと共に、2つのブランドで特色あるパンづくりを発信・展開し、地域になくてはならないパン屋を目指します」

【神戸屋フォーニル】
▽所在地=東京都世田谷区成城2-40-1▽TEL03-3417-8281▽営業時間=8時〜21時、無休

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全粒粉のバタール