「足柄麦神 麦師」神奈川県足柄下郡
人気店「ブノワトン」2店舗目開店
神奈川県産の小麦を全商品に使用

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中央が高橋幸夫氏

料亭のような店構え

モダンな店内に並ぶ商品群
 

メインの惣菜パンが棚に並ぶ

ホタルイカと万能ネギの円盤焼き

高橋氏が市場で仕入れた食材を使う

 神奈川県伊勢原の人気店「ブーランジェリーブノワトン」のオーナーシェフ・高橋幸夫氏が新店「足柄麦神・麦師」を2月にオープンさせた。この店は「湘南小麦プロジェクト」(商標登録済み)普及のための店という位置づけだ。

 高橋氏は「ブノワトン」開店の1999年から、個人経営のリテイルベーカリーとしては珍しく、自店に石臼製粉機と30トンを貯蔵できる自社穀物庫を備え、国産小麦を毎日製粉していた。「『石臼挽きの茶褐色パン』は当時地域に溶け込まず、苦戦を強いられました」と高橋氏は振り返る。「内麦には、外麦の「コク」「クリーミーさ」「ソフト感」には敵わないが、日本人が敏感に感じる味覚「香ばしさ」という特徴があります。そして日本人なんだから日本の小麦を食べるのは自然の流れだと考えました」
 その考えを発展させたのが「湘南小麦プロジェクト」。神奈川県産小麦の栽培だ。「北海道産小麦は質が高いが輸送コストなど、経費がかかります。加えて私は地元が大好きなので、郷土愛から神奈川県産小麦に取り組みました。折しも『地産地消』が世間で認知されはじめた時期でした」農林 61号など5種類の品種で、2002年から実験を重ね、2006年から本格的に栽培を始めた。2007年度は8トンの収穫高となったが、それでもまだ自店を賄う量にすぎない。「もっと安定して収穫できるようになれば、流通に乗せて、県内の他店で使ってもらいたいんですよ」
 小麦を育てるだけではなく、実は高橋氏は、製粉も自社で手がけている。平塚の畑から車で5分ほどの土地に「ミルパワー・ジャパン」という会社を設立。50トンの小麦貯蔵が可能な穀物庫、6連装の石臼製粉機、精麦ラインを完成させた。
 新店「麦師」はその延長線上で産声を上げた。商品コンセプトは「和風」。高橋氏は以前から、和風の新商品アイディアを温めていたが「『欧風のパンと惣菜』を掲げていたので、和風のアイディアを活かす場所がありませんでした。だから新店は遊んだ発想を生かせる。楽しめる場所です」
 高橋氏の言葉通り「ホタルイカ」「しらす」「らっきょう」「塩辛」などを使った目新しいラインナップが多い。もちろん全ての商品に「湘南小麦」をブレンドして使用している。酵母は生イーストと自家製酒種酵母。ベーコン・ハム・パテなども自家製。魚も自店で裁いている。逆に1号店とバッティングする商品は置かない。「『ブノワトン』で人気の高いクロワッサン、デニッシュは置かないのか、と聞かれるのですが、それではつまらないので」と高橋氏は遊び心を覗かせる。アイテム数は70〜80だが、入れ替えも頻繁に行われている。
 「遊べるのは、無借金であることも大きいです。日商は12万円〜18万円と大きくはないですが、女性従業員2人の人件費は『ブノワトン』の売上でフォローも出来るし、枠にとらわれない実験的なことをしていきたいんです」
 商品価格も、比較的手頃な設定にしてある。高橋氏は、現在の小麦をはじめとする原価高騰の影響があっても「これ以上は価格を上げるつもりはない。スーパーに比べればやや高いが、お客さんも『どうせパンは高くなっているんだから、おいしい方がいい』と買いに来てくれる」と意外にもチャンスと捉えていた。「袋詰めしたお得なセットを、わざわざ作るんです。そうしたら試しに買ってくれた人が味を覚えてリピーターになってくれる」と販売戦略を練る。
 箱根という立地は「学生時代から憧れていた場所で、是非とも店を開きたかった。でも商売をするには難しいと思います。初めて独立しようとする若手が店を持つ土地柄ではありませんよ」と高橋氏は独立志望者にアドバイスを送る。
 「まだ開店して間もないので、商品ラインナップ、外壁の塗り直しなど、まだまだ変えていきます」とその過程を楽しんでいる様子。さらに今後は、ベーカリーだけではなく、将来的には1号店の2階にレストランを開くことも事業計画には織り込まれているそうだ。
 同店の主な設備はオーブン1台、ミキサー1台、ドウコン2台。従業員は正社員2名。日商は平日が12万円、土・日曜日は18万円。

【足柄麦神(あしがらばくじん)麦師(むぎし)】
▽住所=神奈川県足柄下郡箱根町湯本71-5▽TEL0460-83-9600▽営業時間=9時〜17時▽定休日=木曜、不定休

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「麦神バゲット」¥320