 荷物が置ける台を付けた焼き菓子類の棚
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大阪北摂の住宅街にある「パン デ キラン」は、ネパール人オーナーシェフが今年1月にオープンさせたベーカリー。ことさらネパール出身という特殊性をアピールすることなく、様々な国のパンを自然体で提供する姿勢に人気が集まっている。
オーナーシェフのKiran Pandey氏はネパールのカトマンドゥ出身。奥さんの和子さんとは母国で知り合い、結婚。1年間は、父親が経営するツーリスト向けのレストランやホテルの2代目として手伝いをしていたが、和子夫人が慣れない海外生活で体調を崩したために里帰りをすることになり、一緒に来日したのだという。
「何の事前準備もなく日本に来ました。日本語も殆どわからない状態でしたが、妻の父親の知人である芝野社長の店で、岸和田市にあるブーランジェリー『シャンソニエ』に就職させて頂き、日本語もパンの技術も一から教えて頂きました。本当に感謝しています」とKiran氏は当時を振り返る。
日本での職にベーカリーを選んだのは、ネパールではなかなか美味しいパンが食べられなかったというのが理由。そこそこのパンを出す店でも、外国人の予約ですぐ一杯になるほど人気があるのに、ベーカリーが少ない。今度、母国に帰ったときに、ネパールの人達に美味しいパンが提供できるようにという思いからなのだという。
「シャンソニエ」で約6年修行した後、大阪マルビルの「パン・カンテ」で2年3カ月修行し、今年の1月11日に独立開業を果たした。
店名の「Pan de Kiran」は、オーナーであるKiran Pandey氏を逆に言っただけのものだが、それで丁度『Kiranのパン』となる。和子夫人は「親父ギャグですけど…」と苦笑する。
今の場所を決めたのは、北摂圏はパン等の食文化が育っているから、舌の肥えた品質に厳しい人が多い。しかし、いい物を提供すれば必ずわかってもらえると思ったからだという。その北摂の中でも、新たに住宅がどんどん建っていく住宅街で、好物件が見つかったため、即決したのだそうだ。
特に、近隣には保育園が幾つかあり、ベビーカーを押す若い親子連れの姿が多く見られる。
「常時、ベビーカーを押して入店されるお客さまが大変多く、店舗設計の際もかなり意識しました」と話すのは和子夫人。「小さなお子様を連れられたお母さんは、買い物をする時にも、子供が商品を触ってしまわないかと気が気ではないと思います。お客さまが、余計な気を遣わずにお買い物ができるように、陳列台を少し高めにし、荷物が置ける台を付けたりしています。子供を抱いたまま片手でも買い物ができるように工夫していることで、お母さんから『ありがとう』と言っていただけることもあります」
オープンに際しては、店前に5日前から『パン屋ができます』と告知の張り紙をしただけ。それでも、オープン日には開店時間前から店前に行列ができていたという。
商品アイテムは約60種類。生地は10種類で、その半分がハード系の生地だそうだ。
「商品的にはハード系を中心にやっていきたいと思っています。職人としてはその方がおもしろいし、やりがいがあります。但し、美味しいと思うパンなら、どんなパンでも作っていきたいと思っています」とKiran氏。
これについては、和子夫人が次のように補足してくれた。
「日本の技術者の方は、フランスパンが上級でアンパンやメロンパンなどは少し下げたような意識をお持ちの方もおられるようですが、主人はネパール人ですから、フランスパンもアンパンも、母国以外のパンという意味では同じカテゴリーなんです。それだけにすべてのパンがおもしろくて垣根がないようです。ハード系に力は入れていますが、アンパンを置くことにも全く抵抗はないようで、良い意味での無国籍のパン屋と言えるかもしれません」
基本的には、二人で協力しながら、美味しくて食べやすいパンをジャンルにこだわらず作っていくということのようだ。
お勧めの商品は「スパイシーカレーパン」160円。レンズ豆、白いんげん豆、金時豆、枝豆が入り、ネパールのスパイスで味付けした豆カレーパン。「サブジ」240円は、ネパール語で野菜という意味。カボチャ、ブロッコリー、枝豆、白と赤のいんげん豆、チーズ、ベーコンが入ってほんのりクミンの香りがする。生地はレーズン種で起こした自家製酵母を使用している。「バゲット」230円は、ミネラルがたっぷり入ったヒマラヤ岩塩のピンクソルトを使用。味わいが柔らかく、年輩の人が良く買って行いくという。毎日殆ど売り切れるそうで、取材当日の午後にも辛うじて1本残っているだけだった。このピンクソルトは国産小麦で作ったハードトースト等、他の色々な商品にも使われている。
また、Kiran氏が特にお気に入りなのが「とうもろこしのパン」大140円、小70円。100%国産小麦で、ピンクソルトと蜂蜜を使い、トウモロコシをたっぷり入れて作ったパンだ。
「ネパールにいたときもとうもろこしは大好きでした。自分の子供も大好きで、気に入って作っています」
同店はこれまで、オーナーがネパール人であるということを殆ど表に出していない。
「特に深い意味はないのですが、表に出し過ぎるとカレーパンや特殊な食材店のように思われてもどうかなあ、との思いがありました。実際に、主人がネパール人であることを全く知らないお客さまもたくさんおられます。でも、ある程度固定のお客さまもできましたし、今後は、もう少しだけネパールをアピールしていこうかなと考えています」。和子夫人は控えめながらも、オープン後の手応えをしっかり感じ取っているようだった。
【Pan de Kiran】
▽所在地=吹田市長野東3-20-103▽TEL・FAX 06-6875-6013▽営業時間=8時〜19時、火曜定休
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