 「小倉あんぱん」
|
オシャレな店が続々と出店する中、「まるき製パン所」は、創業以来の店舗とパン作りの形態を守り続け、若い主婦から男性まで、幅広い客層の人気を集めて止まない。
同店は、現在の二代目社長、木元広司氏が生まれた昭和22年の創業。京都市の中心部、堀川松原の西、「松原京極」商店街に面した、昔ながらの情緒を感じさせる場所にある。
木元氏はパン作りの精神を次のように話す。
「食べるものは、美味しくなければいけません。とにかく、美味しいものを作り続けることが基本です。そして、安心してお客さまに食べてもらえることが、何より大切だと思っています。こだわりは、特にありませんが、少しでも美味しくなることであれば、積極的に取り入れ、どんどん変化させていきます。これが一番良いというものはありません」
更に、パン作りの醍醐味について、こんな熱い弁も。
「むちゃくちゃ、ええもんができた時ですね。年に何回かしかできませんが。あまり余計なことは考えず、美味しいものを作ることしか考えていません。完璧なパンができた時は、ほんとうに悦に感じます」
日々のパン作りで、特に意識していることは『少しの差』だという。『美味しい』ものは誰にでも作れるが、『ものすごく美味しい』ものは難しい。多分『少しの差』を積み重ねた結果だが、工夫や感性、そして情熱がなければ、その差を埋めることは容易ではない。しかし、達成できた時は大きな差となって表れるという。また、他の人よりほんの少し何かをプラスしようと思って仕事に取り組むと、新しい発想が生まれてくるともいう。
商品構成は、半分近くを調理パン系が占め、ハード系が1割、菓子パン系と食パンがそれぞれ2割。調理パンのほとんどがロールパンを使用している。
「一日中、ロールパンを焼いているようなものです。多い時で、一日に1000本ぐらい焼く時があります」と木元氏。
パンの種類は、約60種類。その中で売れ筋商品のトップは、「ハムロール」(150円税込み)。同店の看板商品で、来店客の多くが「ハムロール」と「何か」という買い方をするというほど。木元氏が厳選したハムと市場で指定したキャベツをロールパンに挟んだだけのシンプルなものだが、シンプル故にパンと具材のマッチングが際立つ。
次が、「ハムカツロール」(200円税込み)。これもロールパンに自店で揚げたハムカツとキャベツを挟んだもの。更に、「小倉あんぱん」(130円税込み)は、「Casa BRUTUS」で西日本1位になったほどの逸品。自店で炊いた、北海道十勝産の大粒小豆を使った餡をロールパンに挟んである。
他に、京都パン協同組合で共同製作した、ハムの角切棒をカレー生地で巻いて揚げた「ニューバード」(150円税込み)も人気がある。
調理パンの割合が高いため、特に油には気を遣っている。
「最近、油が高くなっているので厳しいのですが、揚げ物は油が新しくなければ美味しく仕上がりません。毎日、補充しながら3日間で入れ替わるようにしています」と木元氏。
ハード系では、仕事中の男性が車の中でもかじれる大きさの「ミニバゲット」(80円税込み)が売れている。
客層は、平日が30代の女性が中心で、休日になると男性客が圧倒的に増える。
パンの値上げについては「昨年の10月に実施しましたが、今回の麦価引き上げでは、まだしていません。もう少し様子を見てから決めようと思っています」と語り、値上げ以外の原材料高騰に対する策については「今のところパンが売れているので特に何もしていません」という力強い答えが返ってきた。
今後の展望については、「息子と一緒に店を運営するようになって12年〜13年が経ちますので、後継者も育ち心強く思っています。息子が考えている新しいパン作りやパン屋の形態と、私が今まで培ってきた良い部分を融合させて、店舗の形を変えず、更にお客さまに喜んでいただけるパン屋にしたいと考えています。大きくするつもりはなく、他店との違いを明確にすることに重点を置いています。昔の良いところを残すことが、逆に新鮮で、これが『他店との違い』だと自負しています。今後もその路線で頑張っていきたいと思っています」と語った。
自分を奮い立たせるものは、「喜んでいるお客さまの顔」だと話す木元氏。
時代に合わせて形態を変えていく店が多い中、昔ながらの良さを残し続ける同店の今後に期待したい。
【まるき製パン所】
〒600-8356 京都市下京区松原通猪熊西入ル北門前町▽TEL075-821-9683▽FAX075-841-4447
▽定休日=なし
店舗面積は、売場4坪、厨房10坪。主な設備、ミキサー1台、オーブン1台、ドウコン1台。
前へ戻る