 左からヴァルヌス ウント ロジィーネンブロート、ヴァルヌス ブロート、フォルコーン ブロート
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 左から時計周りにクロワッサン、ゾンネンブルーメン ケルンブロートヒェン、クノーテン、ヌスシュネッケン
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兵庫県芦屋市にある、ドイツパンを対面販売する小さな店「ベッカライ ビオブロート」。
ドイツ製パンマイスター資格を取得したオーナーが、オーガニック材料とオーストリア製の石臼で自家製粉した全粒粉を使用して作るこだわりのパンが人気を集めている。
オーナーシェフの松崎太氏は、1997年にドイツに渡り、7年間パン職人として働き、製パンマイスターの資格を取得した。
同氏は、ドイツを選んだ理由を次のように話す。
「初めは、特にドイツという訳ではありませんでしたが、マイスター制度のことを知って決めました。ドイツでは義務教育のようにパン屋で働きながら学校へ通えます。授業時間も就業時間に入っているので、技術だけでなく理論的にも本格的に勉強できると思ったからです」
その、ドイツでの修業時代をこう話す。
「まず見習いとして2年半修業をしました。週に2回はパン学校へ行き、3日ないし4日働く、という1週間です。仕事は午前中に終わるので、時間的には余裕がありましたが、初めは言葉もわからず、教科書を1ページ読むのにも3時間もかかったりして、本当にストレスになりました。そんな時は仕事が終わると、とにかく走っていました」
しかし、ドイツのベーカリーについての印象は、日本で思っていたものとはかなり違っていたらしい。
「向こうへ行って、理論的なことはちゃんと勉強できました。だけど、ドイツへ行けば理想的なパン屋が沢山あると思っていたのにも関わらず、実際には全てがビオ(オーガニック)というわけではなく、その殆どはイーストフードを使い、短時間発酵でパッと焼いてしまう。そんなパン屋が多かったのです。むしろ日本の方が、きっちと発酵させているなと思いました」
日本を離れて、昔ながらの製法を学びたかった松崎氏にっとって、現実との違いはショックだったと言う。
「そんな時、古本屋で見つけた本に書かれていたパンづくりは、発酵から作り方はもちろん、添加物を使用しない昔ながらのパンづくりで、私が求めていた製法そのものでした。その古本で勉強したことは自分自身にとって大変大きかったですね」
その後、マイスターを取得して、バイオダイナミック農法を行う農場の中にあるパン工房で働き始めた松崎氏は、その店のシェフの考え方に、特に大きな影響を受けたのだと言う。
「一般の自然農法は、化学肥料や農薬を使わずに農作物を育てますが、そこでは、それ以上に環境を守り、より自然な農法を行っています。そこで採れた小麦を一から臼で挽いてパンを作る。その姿勢には、もちろん共感しましたが、興味を持ったのはシェフの言動です。ビオの粉は一般に流通している小麦粉と違い、粉の状態が一定ではないので簡単にはいきません。でも、状態が悪く、絶対にまとまらないと思った生地を、その店のシェフは手際よくきれいに丸め、『この粉を扱えれば、どんなパンでも作れる』と言いきったことに感銘しました」
その後、帰国した松崎氏は、ドイツで学んだパンを日本人にも食べてもらいたいと、「ベッカライ ビオブロート」をオープン。今年3月で丸3年を迎えた。
JR芦屋駅から徒歩10分の同店は、緑豊かな公園に隣接する赤い屋根の小さな店だ。パンの消費量No.1と聞いていた神戸で物件を探していて、通りがかった現在の店の立地が気に入り決めたのだという。
木の内装と、木の枠で作られたショーケースが一つだけという店内は素朴な温かさが感じられる。そして、その棚には殆ど予約済みの紙が貼られたパンが並べられていた。
山食以外の全てのパンは、玄麦を工房にある石臼で製粉した全粒粉100%で作られている。
「栄養素が高い小麦の外皮の部分も含めて丸ごと使っていますので、麦は無農薬のものでなければなりません。麦をはじめ、バター以外の副材料も有機のものを使用しています。イーストも有機の小麦粉を天然水で培養したドイツ産のオーガニックのものを使用しています」
オーガニック材料の値段は通常の2倍、イーストは7〜8倍もするが、美味しいものを作るためには譲れないところだと言う。
日本人にドイツパンを受け入れられる工夫について、松崎氏はこう話す。
「特別なことはしていませんが、自分自身が酸味のきついパンが好きではないので、ライ麦は使わず小麦粉を使用することで食べやすい味に仕上げています。酸味のあるライ麦パンをお客さまからリクエストされることもありますが…。納得が出来る材料で、自然の旨みが味わえるパンを作っていきたいからです」
全てのパンは3日前に種を仕込み、前日に生地を作り一晩発酵させ、当日焼き上げる。生地は4種類で、全商品の種類は15アイテム。決して多くはないパンの種類だが、その全種類を試食できるようにしている。
「毎日、一定量のパンを作り、ロスはありません。商売には何割かの販売ロスが必要だと言われていますが、もったいない感じがするので余分に作ることはしません。生地も一度に沢山仕込み、時間の無駄もなくしています。
以前、日本で働いていた頃から、何故そんなに長時間働かないといけないのか疑問に思っていました。私は最長で9時間を目途に労働しています。合理的に仕込めば、かなり作れます。もちろん仕事は大切ですが、趣味など、自分の時間を持つことも大切だと思うので、仕事が終わると出かけてカフェで本を読んだり、作業プランを作成したりもします。環境を変えることで頭の働きも違いますし、新しい発想が生まれ、仕事にも繋がると思うからです。だから、今でも気分を変えるため、近くの山まで走ることもあります」
同店の今後の取り組みについて松崎氏は「今の状況でも、まずまず安定しているのですが、作業プラン等を見直すことで、労働時間のバランスをより改善し、パンの品質を保ちつつ、一人でどこまで無理なく製造できるのか挑戦してみたいです。それと、今年中にサンドイッチも取り組もうと思っています」と話した。
4、5人も入れば、一杯になる5坪程の売場だが、予約の客が頻繁にパンを取りに来る。日商額は平均17万円。客とのコミュニケーションを大切にするために対面販売を取り入れ、初めての客には、より理解を深めるために、パンの保存方法や種類と原材料を表にした紙を用意し、しっかりと顧客を掴んでいっている。
《同店の商品の一部》
▽食事パン=トースト ブロート(食パン)620円、フォルコーン ブロート620円、ゾンネンブルーメン ケルンブロートヒェン(ひまわりの種入り)130円、ヴァルヌス ウント ロジィーネンブロート(くるみとレーズン入り)890円▽菓子パン=クノーテン130円、ヌスシュネッケン(くるみとシナモン入り)210円、クロワッサン160円
【ベッカライビオブロート】
▽兵庫県芦屋市宮塚町14-14-101
▽TEL・FAX=0797-23-8923
▽営業時間=9時〜18時30分、火・水曜日定休
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