 白を基調とした店内
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 奥行きがある間取り
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盛岡で人気を博したリテイルベーカリー「ボワ・ド・ヴァンセンヌ」が東京へ移転し、まもなく一年が経とうとしている。地方経済の不況の波、そして店舗運営の将来のために移転に踏み切った同店の現在を取材した。
ボワ・ド・ヴァンセンヌが早稲田に店を開いたのは2007年12月。一見新規店のように思えるが、同店は81年2月〜91年2月に同じ地でベーカリーを開いていた時期もある。
元々この土地はオーナーシェフの倉林秀明氏の実家。以前はサラリーマンだったが、一念発起をしてベーカリーへ転職。10年間のベーカリー経営の後、近隣に勤める米国人パティシエからパリでの研修に誘われ、フランスへ移り住んだ。その間、早稲田の店は、営業形態がまったく異なる寿司屋へ貸すことになった。
2年間の修業を経て帰国した倉林氏は、元の早稲田で店を再開するのではなく、仲のよい友人の誘いで盛岡へ移住することにした。「盛岡は自然が多く水がきれいな土地でとても魅力的でした」と倉林氏は振り返る。
盛岡では、比較的珍しい欧風パンを扱う店として、熱烈なファンを集めていたが、大型ショッピングセンターが強く、個人店が弱体化している地方経済の流れ、また将来的に子どもへ代を譲るには東京の方がベーカリーとして発展性があると判断し、早稲田に戻ることにした。94年に開店した盛岡での店舗は07年に終止符を打った。
「東京と盛岡では売れ筋の商品がまったく違います」と倉林氏は比較する。「盛岡では堅いパンは受け入れられにくく、レストランやビストロなどにフランスパンを卸してはいたが、店売りの主流は甘いパン。米が強い東北の文化もあるでしょう」。
一方、東京では「フランスパンやドイツパンがよく出るようになりました。以前同じ土地で営業していたため『よく帰ってきてくれた』と昔からの住人の方は歓迎してくれました。元々、早稲田はパン屋が少ない土地なので、ニーズはありますね」。但し、学生街のイメージがあるが、学生はほとんど来ない、とのこと。
盛岡での経験もあり、味や香りがよく農薬の心配がないことから、南部小麦をすべてのアイテムに配合している。それらは以前から付き合いの深い製粉会社から直接仕入れている。
元々、南部小麦は製パンには不向きと言われていたが「最近の粉は品質が向上してきています。製粉会社が熱心に農家を指導したり、農業試験センターが改良を重ねているからでしょう。後は経験でカバーします」と倉林氏は軽く言ってのける。
酵母はイースト、ホシノ天然酵母、自家製ルヴァン、自家製サワー種など。卵は「他に良いものがないから」と岩手・浅沼養鶏場の自然卵を使い続けている。フィリングは殆どが自家製だ。
商品は現在50種類ほど。仕込み生地数は14〜15。ドイツパンにまだ馴染みの薄い客のために、食べ方の提案や少量ずつ買えるようにと、販売も工夫している。
原価高騰の打撃もあるが、移転したばかりということもあり、価格転嫁は難しいという。バターを大量に使うブリオッシュが店頭から姿を消したりと、ラインナップを変えながら苦闘しているとのこと。
目下の悩みは、まだまだ店が周辺地域に知られていないこと。「東京は情報が多い分、伝達スピードが地方より遅いように感じます。わざわざ足を運びたくなる店、そこでないと買えない商品を作って、地域のミニコミ誌などで広報をしていくつもりです。
そのためには商品の品質を上げていかなければいけません。もちろん品質の『維持』だけでも大変です。お客さんはすぐ味に慣れてしまうので、ちょっと美味しいくらいでは評価してもらえない。味が落ちればすぐに分かってしまう。他店の味と比べることを推奨するのも変ですし」と苦笑する倉林氏。
東京の店を訪れる盛岡時代の顧客がいるほどの同店。早稲田で新規ファンを獲得するのも近いだろう。
【ボワ・ド・ヴァンセンヌ】
東京都新宿区早稲田町5番地、TEL・FAX03-3209-1531
営業時間=8時〜19時、定休日=日曜日(不定休日あり)
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