「三浦パン屋充麦」 神奈川県三浦市
自ら小麦を栽培、製粉してパンを製造
地産地消、食育を実践

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蔭山充洋氏

三崎口駅から約1.5キロの立地

バラエティなメニュー
 

壁の色は白基調で統一

シンプルなインテリア

季節のヴェノワスリー

 神奈川県三浦市で、自ら育てた小麦を使っているベーカリー「充麦」(みつむぎ)。開店は2008年2月だが、その準備は3年前へ遡る。オーナーシェフ・蔭山充洋氏の奥様利子さんの実家が所有していた畑を借り、小麦を育てることから始まったのだ。

 小麦栽培のきっかけはヨーロッパ渡航。旅行で知り合った、フランス人の夫と日本人の妻が営むフランス南部・アビニオンのベーカリーを訪ねた。そこは店の奥の畑で栽培した自家製の小麦でパンを作る店だった。感銘を受けた蔭山氏は、さっそく日本で栽培に着手した。
 「横須賀のリテイルベーカリーで6年働き、製造を任されていたのですが、栽培や製粉のことは全く分かりませんでした。最初はトラクターの乗り方さえ危うかった程」と蔭山氏は笑う。
 1年目で小麦約三百kgを無事収穫。しかし、米袋に入れて保存していたら、三百kgすべてにカビが生えてしまった。それまで順調に進んでいた分、大きなアクシデントにぶつかった。
 その反省を生かし、今は実家の蔵の半分を仕切って倉庫にし、エアコンをつけて脱酸素剤を入れ、専用のドラム缶で貯蔵している。それからはカビや虫などのトラブルはなくなったそうだ。
 種蒔きは12月、収穫は6月の年1回ペース。強い雨で麦が倒れてしまったり等の天災は時々あるが、「基本的な育て方は決して難しくない」と蔭山氏は語る。今では4年目に入り、安定した収穫量を確保できているそうだ。
 栽培の次は製粉が待っている。もちろん自家製粉だ。葉山のメーカーから購入した初代の製粉機では、1日1kgが限度だった。今では二代目の製粉機を仕入れ、1日5kgほど製粉することが可能となった。
 製粉機にかけた後は篩いを通し、キメの度合いで4種類に分類する。例えばバターロールにはきめ細かい粉、クロワッサンには粗い粉を使用。フスマも残さず使用し、取り除いた麦の枝や茎などは、再び畑へ撒き肥料にする。「無駄なくサイクルしています。まるで理科の授業のように」と蔭山氏。
 自家製の粉と、市販の内麦を商品によって比率を変えながらブレンドして使用。商品の食感や強さ、作業性などで変えているそうだ。フィリングなどの材料は、三浦市のものが多い。苺などのフルーツは地元産。餡は地元の製餡会社のもの。酵母はイーストや自家製ルヴァンのほかに、三浦半島の海で採れる海洋酵母を使用。地産地消にこだわりを持つ。こうして出来上がる商品は40〜50種類ほど。仕込み生地数は約9種。
 「小麦の味がストレートに分かるのはハード系ですけど、慣れていない人には入門編としてフィリングが入ったものを食べていただければいい。バラエティに富んだパンを用意しています」。
 畑が多い地区のため、農作業の合間におやつとして買いに来てくれる人もいるそうだ。
 『自家栽培、自家製粉で商品を作る』。一見すると手間がかかる運営形態だが、蔭山氏は「安心・安全・健康を第一とする自家製ではありません」と言う。「スーパーで売っている魚の切り身を見て、魚はこの形で海を泳いでいると思う子供がいるように、パンが何から出来ているか知らない人もいる。同業者でさえ、麦や麦畑を見たことない人がいる。それはすごく寂しいことだと感じました。『土を耕し、種を撒いて育て、製粉し、パンにして食べる』といった一連の流れを周りの人と体験し、大切さを共に感じたい。そして、このような自然のサイクルに身を置いた生活をしたいのです。近所の小学校では小麦を育てる食育の授業が行われていて、相談も受けています。もっと地域に小麦が根付いてくれたら嬉しいですね」

▽主な設備=オーブン1台(櫛澤電機溶岩窯)、ミキサー1台、ドウコン1台、製粉機2台
▽従業員=製造2人、販売2人

【三浦パン屋充麦】
住所=神奈川県三浦市初声町入江54-2、TEL046-854-5532
営業時間=6時半〜18時半、定休日=水・第2火曜

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