 くるみチーズフランスなど
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 カツサンド
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 焼き立てのキッシュ
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ブーランジェリー パン ドゥ パンは、2015年7月に新規開店した。駅に至近の商店街ではなく、住宅や個人の会社事務所、少しの商店が軒を並べる立地に佇んでいるが、わざわざ買いの固定客を中心に三原にはなくてはならないベーカリーになっている。
オーナーシェフの松井敬貴氏は、神戸生まれで神戸育ち。大阪の辻調理師専門学校を卒業後、同グループフランス校で料理を学んだ。帰国後は、ホテルニューオータニなどで勤務。ホテル時代にパンの奥深さを知り、ベーカリー業界に足を踏み入れた。地元神戸のベーカリー数軒で修業。結婚後、夫人の実家がある三原に移住し、広島県内のベーカリーに勤めながら、新店舗立ち上げのプロデュース等に携わった。そのような経験を経て独立、同店をオープンした。
関西から三原へは新幹線の利用が便利で早いが、諸般の事情を考慮し、また食べ物を扱われるベーカリー取材であるため自家用車で伺った。往路、山陽自動車道の福山サービイエリアで休憩をしたが、駐車している車の台数に比べ、人の数が少ないと思った。ベーカリーも出店しており、商品を見ると全てが個包装され、想定可能なコロナウィルス対策が万全に施されていた。
昼食を食べたレストランのレジ係に聞くと、平日は半分以下に利用客が減ったということだった。
同店に到着し、店舗に入って先ず目についたのは、一つずつ丁寧に袋詰めされた商品。多くのリテイルベーカリーで、はだか売りの商品を見慣れているせいか新鮮さを感じた。
「製パン機械メーカー社長の勧めで個包装に踏み切った。三原にはベーカリーが少なく個包装率を正しく把握できないが、福山では約4割程度の進捗率だと聞いている。コロナの影響で当店も来客数は若干減少しているが、大幅な売上の落ち込みには繋がっていない。むしろ、これからのことを心配している」と松井氏はいう。周りにはベーカリーがなく、最も近い店でも車で約15分の距離。競争相手は、福山市内のベーカリーになるが約30km離れている。
パン作りの基本は、自分の子供に安心して食べさせたいもの。「スタッフにも『自分が作った商品を自分の子どもたちに安心して食べさせたいかを基準せよ』と言っている。また、料理の経験が長いので、野菜の下処理などは必ず行うという手間の掛かる作り方をしている」。ベーカリー仲間から「手間を掛け過ぎ」と言われることもあるらしい。
店舗のコンセプトは、あらゆる客層に対応できるオールマイティな商品を取り揃えること。「ハード系には、こだわりを持っているが、それだけに偏らず、やわらかいクリームパンやサンライズなども素材を重視した作り方をしている。年配者がハード系を好んで食べる傾向で、バゲットサンドの常連客は決まって老婦人。トレーサビリティが不明確な材料、マーガリンは一切使用しない。地域で獲れる季節の野菜や果物をふんだんに採り入れることで地産地消に貢献していると自負している。商品を個包装にすることで、食感が変わってしまうため焼き立てパンを売る店の良さが消えてしまいそうと残念がるお客様もいる」と松井氏。
三原市は、出生率が高いらしく子どもが多い。昔とは比にならないが、今でも3人や4人の兄弟が揃ってパンを買いに来るという。近隣の小学校は児童数も多く、各学年3クラスを保っている。「学校が休校で、たくさんの子どもが家に居るからか、客単価は少しだが上がっている」。
人気商品は次のとおり。トップクラス:バゲット、エピ(明太子と餅入り)、サンライズ、丹波産黒豆とクリームチーズの平焼き(肥沃な大地で育った丹波産黒豆とクリームチーズが見事なハーモニー。セミハード生地の平焼きは噛むほどに美味しさが広がる)2位クラス:特選あげカレーぱん(しっかりとカレーが入っている)、はちみつバター(カリッとしていてバターがとろける)、ソフトミルクフランス(徐々に人気上昇中)、くるみチーズフランス(くるみとチーズの相性が抜群のおいしさ)サンドイッチ部門では、カツサンド。安心・安全の「三元豚」を使用。食パン・トンカツ・地元キャベツが相乗効果を出している。
商品はパンだけに留まらず、パンに関連するオリーブオイルやクリームチーズ、発酵バターなども買うことができる。「具だくさんのオリーブオイル」は、@クリームチーズに混ぜてフランスパンに塗る。Aサラダにかけると食べるドレッシングになる。Bほうれん草とベーコンを炒めて醤油とオリーブオイルをパスタにかけると和風パスタが出来上がる。Cアヒージョも作れる。という食べ方の提案がされていた。
松井氏は、今後力を入れたい取組と商品、将来の展望を次のように語った。
「地元ベーカリー同士の繋がりで、勉強をする機会を増やさなければいけないと思っている。そのようなグループの中で、知識や見聞を水平展開することが重要で、自分の店だけを守るという閉鎖的な思考では生き残れないと思っている。パンの世界で挑戦したい商品は色々とあるが、料理の経験を活かして、パンと一緒に食べられるものを作りたい。例えば、バゲットと合わせると美味しいが作り方を知らないだけで実は簡単につくることができる一品やキッシュなど。また、パンとワイン、パンと日本酒に合うデリカ系を揃えていきたい。
今後、三原にもベーカリーが増えてくるかも知れない。しかし、価格で勝負するようなことはせず、間違いのない商品を適正な価格で販売する考え方を貫きたい。他店と目線の異なるベーカリーを目指す。
店の発展は、人を育てること以外にないと思っている。根本的に、店を育てたいと思い続けているので、将来展望は人材育成に尽きる。過去に様々な努力をして店を構えた。今は私がオーナーだが、永遠にオーナーであり続けることは不可能。誰がオーナーになってもお客様に喜んでいただける店づくりができるようにしたい。
【Boulangerie Pin de Pain】
〒723-0013広島県三原市古浜1-2-9
TEL&FAX0848-67-3911
▽営業時間=7〜18時
▽定休日=月・日曜日
▽アクセス=JR三原駅から約650m(徒歩8分)
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