BAKERY KITCHEN GRIMM HOUSE〈東京都江東区〉
経営理念は「好品質・好価格」
アレルギー対応商品を開発し笑顔を増やす

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木島氏

店舗外観

工場外観
 

工場内の様子

店内の様子

味噌パン

 BAKERY KITCHEN GRIMM HOUSEは、創業95年のM三好屋食品工業が運営する。亀戸五丁目中央通り商店街の東端に位置し、古くから地域の人々に手作りパンを提供している。

 M三好屋食品工業は、受け継がれた「こだわりの味」、学校・病院へ届ける「信頼の味」、一般企業に届ける「自信の味」、地域に届ける「手作りの味」をモットーに地域に密着して愛され続けている。
 代表取締役の木島一哉氏は、同社の歴史を次のように語った。
 「創業は昭和元年で、祖父が和菓子店として商売を始めた。戦後まもなく、近くにできた日立製作所から夜食になるようなものを作ってほしいと依頼がありパンを作るようになったと聞いている。最寄りの東武亀戸線亀戸水神駅は、その日立製作所通勤客が利用しやすいように現在の場所に移転しているが、元は店舗の至近にあり、当店舗は駅前立地であった。昭和30年頃から学校給食事業に参入して「三好屋」という屋号で和菓子・パンを製造・販売していた。工場が店舗の北隣にある。和菓子製造はほとんどしていないが、年末にのし餅と鏡餅を製造しイオン系店舗に卸しているだけで、時代とともにパン製造に軸足を置くようになった。市販パンを販売する店舗が『BAKERY KITCHEN GRIMM HOUSE』で、学校給食パンを含む卸しを『三好屋食品工業』としている」
 木島氏は、3代目社長。経営理念は「好品質・好価格」。高品質・高価格ではなく、顧客に好まれる品質を好まれる価格で提供したいという想いが込められている。会社全体の売上構成比は、GRIMM HOUSE約3割、卸約7割。
 「GRIMM HOUSEのパンは相対的にリーズナブルだと言われている。しかし、家賃を支払って経営している訳ではなく、卸のように卸値があり時間と運賃を負担して納品している訳でもない。例えば、100円のパンはそのまま100円で売れ、しかもお客様が店まで買いに来ていただける。そのように考えると、求めやすい価格で地域に還元することがベストだと思っている。単に安くして沢山売ろうとは思っていない」と木島氏。  店舗周辺は、東京下町の風情が色濃く残り、亀戸五丁目中央通り商店街も営業店舗が減っているものの、決してシャッター通りではない。基本的に住宅地で、新しいマンション等も立ち並んでいる。同社パン作りの起源になった日立製作所は移転、亀戸中央公園になって近隣住民の憩いの場所になった。
 新型コロナウィルス感染拡大防止により、学校給食は壊滅的な打撃を受けているが、市販パンは学校給食のような影響は回避できているという。土地柄か高齢者の固定客が多く、需要拡大には至っていないが安定的に推移している。
 「学校給食パンは、米飯給食の導入で徐々に減っていった。その余力で病院や高等学校の売店、保育園・幼稚園にパンを卸すようになった。今、教育機関は休校でゼロだが、病院関連は変化がない。そうは言うもののベッド数が増えない限り需要拡大は見込めない。台場のフジテレビ売店にも卸しており、同局が主催するカナダ・モントリオールのサーカス劇団「シルク・ドゥ・ソレイユ」東京公演時にはサンドイッチ等を提供している。
 パート・アルバイトは休んでもらっているが、正社員は全員出勤し製造業務を行なっている。店舗の前を歩く人も極端に減っているが、なぜか高齢者の数はあまり変化がない」
 店舗での影響は、全商品の個包装化と販促努力(試食など)ができないこと。ある店では試食を伴う販売額が1日20万円を超えることもあるという。それができなければダメージは大きい。
 同店の看板商品は「味噌パン」。江東区異業種交流会で開発したパンで、全国中小企業融合化促進財団優秀製品賞を受賞した商品。
 木島氏は同商品を次のように説明した。
 「パン生地に味噌を練り込むことに違和感を感じた。味噌は塩分でイーストの敵というイメージだった。味噌専門店からの提案だったが、最初は全く乗り気ではなかった。同交流会は、江東区がバックアップをし、区内中小企業の2代目3代目が集まって業種は違えど共通の悩みや課題を話し合い解決の糸口を探るもの。会合を繰り返すうちに何かカタチになるものを作ろうということになり、区内の名物品で食べ物を開発することになった。交流会メンバーには、味噌屋やパン屋などが参加していることから『味噌パン』に決まった。
 「1999年に受賞しているので、前年か前々年に開発したもの。当時は、デニッシュブレッドがブームで、デニッシュブレッドに味噌を練り込んだ。味噌を入るのことによって適度な塩分が加わり飽きない味に仕上がっており、20年以上が経過しているにも関わらず、安定して売れている。毎年行われる区民祭りには必ず出品要請が来て、1日で800本ほどが売れる。全国販売も行っている」
 木島社長自身は最初、味噌との組み合わせに二の足を踏んだと言い、パン製造業の常識とは逸脱しているように感じたらしい。伝統的な製法や商品は、守り続けなければいけないが、消費者の立場で何が喜ばれるかを考えることも必要だという一例だと感じた。様々な地域でその土地柄や風土に合ったパン商品が生まれることにより、パン産業はさらに発展すると考えられる。
 「これほどのロングセラーは他にない。学校給食でも年に数回提供している。次の一手を模索しているが、なかなか生み出せていない」と木島氏。
 定番の人気商品は、カレーパン、塩ロール、夕張メロンパン。食パンでは上食パン。
 GRIMM HOUSEが目指すパン作りは、アレルギー等に対応した商品を随時開発すること。学校給食を含む卸しをメインに約100年間の実績を生かし、乳や卵、塩を配合しないパン商品を提供し、アレルギーや病気に悩む親子の笑顔を見ること。
 新しい商品として「みみりんとう」を開発したという。同商品は、サンドイッチに使用する食パンのみみを乾燥させ、素揚げした後に黒糖を絡めて「かりんとう」のように仕上げたもの。食パンのみみを使用していることから「みみりんとう」と洒落た商品名にした。かりんとうに比べ、ソフトな食感が特徴。週末には、袋に詰め放題サービスも実施している。「味噌パン」同様、地方発送も承っている。  木島社長は「今までは卸しの割合が大きく、卸・学校給食・市販という3本柱で事業を継続してきた。卸と学校給食が安定していたため、市販(リテイルベーカリー)にあまりウエイトを置いていなかったが、様々なシーンで研鑽を積み、市販の割合を50%にしたい。リテイルベーカリーとしての地位が確立できると、卸と学校給食もより強固なものになると考えている」と今後の展開を述べた。

【GRIMM HOUSE】
▽取扱製品=パン類全般・洋菓子・和菓子
▽営業時間=6時30分〜19時30分
▽アクセス=JR総武本線亀戸駅東口より徒歩8分、東武亀戸線亀戸水神駅より徒歩5分
▽駐車場=なし
【三好屋食品工業概要】
▽本社工場=〒136-0071東京都江東区亀戸5丁目46-3
▽電話=03-3683-0344〜5(代表)
▽FAX=03-3683-0590
▽事業内容=学校給食パン・業務用食パン・特製パン・菓子パン・焼菓子・洋菓子・和菓子等の製造・販売
▽事業構成比=市販パン(GRIMM HOUSE):約30%、学校給食:約30%、卸等:約40%
▽創業=1926年(昭和元年)
▽従業員数=50名(正社員12名/パート・アルバイト38名)

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食パンなど

みみりんとう