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ブーランジェリーモリモリは、2019年5月28日オープンした。パン激戦区と言われる京都市内で、シンプルなハード系食事パンの日常化を目指している。独立開業は夢の通過点で、さらに大きな夢を求めて前進している。
オーナーシェフの森川浩道氏は、1976年京都生まれ。京都で育ち学校も仕事も京都を出ることがなかった。高校を卒業すると同時にM志津屋に入社、23年間主に製造部門の仕事をしてきた。2018年12月末に退社し、オープンの準備を始めた。
「夢として、ベーカリーを経営したいと思っていた。会社勤めをしているうちにその気持ちが薄くなる時期もあったが、色々な人の後ろ盾があって独立開業に漕ぎ着けた。志津屋では、工場をはじめ、京都駅店・本社で勤務し、店舗のリニューアルにも携わった。新店舗の製造チーフとして何店かを任されたこともあった」と森川氏は志津屋時代を振り返った。
店舗物件は、独立開業を決めた時から探し始めたが、自分のイメージに合う場所と店舗がすぐには見つからなかったという。しかし、志津屋退社直後に現在の店舗に出会った。
「この店舗は、誰にも貸されたことがなく、ビルのオーナーが将来何かを始めるために温存していたようだが、初めて貸店舗を募集したところタイミング良く見つけて契約に至った。設備機器もほぼリユースだが、タイミング良く買い得な機器を手に入れることができた」と森川氏。
立地は、烏丸通から東に入った場所で、会社や事務所が多い割には、民家や集合住宅もある。店には専用駐車場はないが、安価なコインパーキングが沢山あって車での買い物も不便を感じない。
独立して1年余り、サラリーマンの時とは大きく意識が変わったという。
「自分で店舗を持つと、言い換えれば夢が実現すると次の夢を作らなければならなくなり、パンを作っていればよいというものではなくなった。美味しいパンを作ることは当たり前で、どうして売るか、何をしてお客様を呼び込むかが仕事の軸になった。また、43歳という年齢を考えると、将来のパン業界における立ち位置や自分像を描かなくてはいけない。ベーカリーは商売で金儲けをしなければ意味がない。私の背中を押してくれた人のためにも、もっと頑張らなければいけないと思っている」。
店名の由来は、名前の通り。「以前から周りの人や友だちから『モリモリ』と呼ばれていたので、分かりやすく良い屋号だと思っている」と森川氏。
店のコンセプトは、シンプルなハード系食事パンを売ること。
「フランスパンなどは、日本の食文化に定着してきたとはいえ、新しいものを好む京都でもハード系の消費はまだまだ少ない。今までにないもっちりした多加水生地で、シンプルでありながら旨味のあるパンや層の美しいクロワッサンを目指している」
商品のこだわりについて「フランスパンや食パンに使用する小麦粉は、限りなく国産(北海道産)を使用している。余計な添加剤は極力使用しない。製法は、食パンに20%の湯種を配合しており、思っていたよりもっちり感が強い。特殊な原材料を使用している訳ではなく、あくまで『シンブルに』を追求し、あまり手を加えず、小麦粉の風味を引き出すことを大切にしている」
焼き菓子などを担当するスタッフの花井優一氏はパティシエ。2013年に開催された「クインビーガーデン第8回メープルスイーツコンテスト」でグランプリ(作品名:Maple Raffine)を受賞している。森川氏も同コンテストパン部門(作品名:メープルスイーツクロワッサン)で優勝。このコンテストが縁で、以来一緒にベーカリーやパティスリーを視察した仲。
「開業を彼に伝えると、これもタイミング良くFreeで、一緒に店をやらないかと誘ったところ快諾してくれた。私は、ハード系のパンをメインにするので、焼き菓子などを作ってもらうよう頼んだ。今では、分担制のようになって日々の製造を行っている。少し前まではアルバイトを雇っていたが、現在は2人で仕入れ・製造・販売などの全ての業務を臨機応変に対応している。人件費が突出して高いため、なんとかしてコロナ禍を乗り越えなければならない」
商品構成は、調理パン系約4割、ハード系3割、食パン・焼き菓子など3割。
パンの売れ筋商品1位は、焼きカレーパン[200円](食パン生地を使用)、2位もりもりの山食[270円]、3位チーズとコーンのパンドロデヴ[180円](シェフ一押し/リピーターが多い)。焼き菓子では、パイ系(アップルやオレンジ)が人気。ベーカリーにはないパティシエの仕事感覚で作り上げている。「私自身も非常に勉強になり、2人で運営する相乗効果が出ていると思う」と森川氏。
新型コロナウィルス感染拡大防止による様々な対策による影響を森川氏は次のように話した。
「緊急事態宣言が発令される直前から約3週間の休業を決め、収束しそうにもない状況を判断してゴールデンウィークが終わるまで休んだ。毎日の売上が落ち始め、京都府でも感染者が出始めた頃だった。再開はしたが、現在も落ち着いた状態。入り口には、マスク着用のお願いを貼り出し、レジ周りにはフィルムを張り、商品は全て個包装にしている。最低限度これくらいの対策は施さなければいけないと思っている。お客様の立場で考えると、このような状態が安心できるレベルで、リテイルベーカリーの特長だからといってパンを裸で並べていると非常識極まりないと言われるだろう。
ベーカリーには生活必需品のパンを買いに来店される。コロナ以前は焼き菓子やスイーツ系の比率が今よりも格段に高かった。それらを合計すると収入面で大きな影響が出ている」。
コロナ禍以前の生活に戻ることは、すぐに実現しそうにもないが、一日も早く先が見える状況になってほしいと思う。首都圏では、感染者数が増加傾向にあり、再び緊急事態宣言の発令という状況に陥らないよう、少し緩んだ気持ちを改めて引き締めなくてはならない。
森川氏は、今後力を入れたい商品と将来の展望を次のように述べた。
「サンドイッチは、食パンを使ったタマゴサンドのみなので、バリエーションを増やさなくてはいけない。メインにするというハード系パンもまだまだ弱いと感じているので、さらに力を入れたい。具体的には、今作っている抹茶のフランスパンのように見た目でお客様を惹きつけ、食べて美味しい商品の開発に取り組みたい。
多店舗展開をするつもりはない。この店舗は、厨房部分が十分な広さを確保できているで、製造量はいくらでも増やせると考えられる。催事などに出品の機会があれば参加したいと思う。製造量が増えると規模も大きくなり、人も雇用することになる。私の下で働いた人が独立してベーカリーになりたいと思ってくれるような店になりたい。また、人として成長できる環境を整備したい。そのような人たちが、将来のパン業界を牽引してくれることを願う」
【ブーランジェリーモリモリ】
〒604-0854京都府京都市中京区仁王門町11番
TEL075-746-3676
▽営業時間=8〜17時
▽定休日=月曜日
▽アクセス=京都市地下鉄烏丸線・東西線烏丸御池駅下車北へ徒歩約7分(烏丸二条を東に入ってすぐ北側)
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