 フランクロール
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 三田牛すきやきパン
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 明太子フランス
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Pパンプキン(湯井正人社長)は1994年8月に創業。以来、客目線のパン作りを貫き、現在は三田市と神戸市に合計4店舗を構えている。近隣はいうまでもなく、全国ご当地パン祭りで名を馳せた「三田牛すきやきパン」は全国区でファンが存在し、兵庫県を代表するベーカリーの地位を堅持している。今回は、専務取締役の湯井信一氏(46歳)に会社の歴史やコロナ禍に打ち勝つ話などを伺った。
創業者は、島根県出身で専務の父。伊丹の食産パン(後にアロームマオイシス)に勤務していたが独立を志し退職して開業を果たした。元は職場に近い宝塚市在住だったが、開業の約3年前に独立も視野に入れて三田市に越した。当時の三田市は、兵庫県内の人口増加率No.1で、新規店舗にとって強い追い風が吹いていた。
専務はその時、高校を卒業して日立造船M系の橋梁専門の会社に入社し施工管理者を目指していた。
「早く一人前の施工管理者になることが目標だったので、父の事業と自分を結び付けていなかった。しかし、20年前に母より実家に戻って製パン業をともに営んでほしいと言われ、結婚もが決まっていたこともあって、新たな目標への切り替えを決意した」と専務。
他店での製パン修行は特になく、基本的に父直伝の製造方法を一から学んだという。休日を活用して、様々な店舗に入らせてもらい製法や製パン業の文化などを吸収した。また、日本パン技術研究所の100日コースに入所し、パンの基礎知識と製パン理論を習得した。
「前職との関連性が全くなかったので最初は苦悩の日々だった。仕事をしながらパンに関する勉強をしなければならず、いくら時間があっても足りなかった」。
店名の由来は「理由や動機は分からないが、社長から聞いているのは『響きが良い』から。確かに響きが良く、覚えやすい名前だと思っている」。
現在、4店舗を運営。5年前に経営理念を確立し、同時に中期売上目標を5億円と定めた。昨年度の売上がようやく約4.5億円になり、中期売上目標の達成が見えてきたという。
「本店は、9年前まで現在の店舗に近い場所にあり、売場面積が約7坪の小さな店だった。郊外の大型店舗が流行り始めた頃に縁あって時流に乗ることができ、約400坪の大型店舗を手に入れることができた。急に規模が大きくなり、立派過ぎて最初は戸惑っていたが、売場の拡大や店内のカフェコーナー・テラスなども実現でき、お客様に喜んでいただけて良かったと思っている」
全店舗の商品構成は、食パン15〜20%、サンドイッチ20〜25%、ケーキ類5〜10%、カフェ5%、フランスパン10%、菓子パン・ドーナツが残り。
「ケーキ類が他のベーカリーに比べ若干高いのは、オリジナルケーキをパティシエが作っていることが要因だと思う。しかし、お客様はパンを買いに当店に足を運ばれるのであって、ケーキを買いに来ているのではない。いくらパティシエが作った付加価値の高いケーキでも、売上比率に反映させることが難しい。パティシエにしてもパンが主流であるため、力を出し切れていない部分があると推測できるため、これらを解決することが商品構成上の課題。前月は、キッシュを発売し売上を伸ばすことができた。この連続がモチベーションの上昇に繋がると考えている。客目線になり、固定観念に縛られないことが重要で、どこのベーカリーにも、どこの洋菓子店にもないケーキ作りに力を入れたい」
売れ筋商品は、1位:ゴロゴロ肉で大満足の「やわらか牛肉のカレーパン」、2位:自家製カスタードクリームの「自家炊きクリームパン」、3位:子どもも大好き「フランクロール」、4位:兵庫県ご当地パンとして大人気の「三田牛すきやきパン」、5位:こだわり生地にかねふくの明太子を使用した「明太子フランス」。本店オリジナルのかぼちゃ生地を使ったふんわり優しい甘さの「Pan!Pan!かぼちゃのメロンパン」は、創業26年を記念したテーマソングもある。カフェスペースで食べられるモーニングセットやランチセットは、ドリンク(ランチはサラダorスープ)と合わせて割引価格で提供している。
店内のディスプレーや来店客への商品の見せ方は、全てスタッフに任せている。毎月、販売個数のデータから人気順位を発表しているが、コーヒーがベスト5に入ることもある。最近ではレジ袋がベスト5に入った。
コロナの影響は、3月の緊急事態宣言発令当初、対前年売上比5〜10%増加した。しかし、感染が拡大するに連れスタッフの緊張感が高まり、来店客もコロナ対策に過剰な反応をされるようになった。それまで定休日は月に1回だったが、スタッフの充分な休息が必要だと考え、毎週月曜日を定休日にしたことにより、単月度で昨年を若干下回った。3〜8月では、ほぼ前年並みで推移している。利益は、定休日増で経費削減となり、前年を上回っている。毎週休みがあると、スタッフのやる気にも影響し自然な形の働き方改革で生産効率がアップしたようだ。
コロナ対策は、保健所指導の下、従業員一同にマスクの着用、手洗い、アルコール消毒を徹底するとともに、来店客にはマスク着用の協力を求めている。
「一部の焼き立て商品を除き個包装、レジ前のパーテーション設置など、すぐにできることは率先して行なっている。今後、さらに厳しい感染拡大防止策が要求されることを危惧している。全商品を個包装化してしまうと、焼き立てパンの良さが消え、ホールセールとの差がなくなってしまいかねない」。何よりも重要なことは、客が不安だと感じることを敏感に察知し、素直に受け入れて、すぐに対策を実施する機敏さを磨くことだという。
コロナ禍では、マイナス面ばかりがクローズアップされるが、悪いことばかりではなく、良い体験として今後の経営に活かしたいという。営業時間短縮や休日の増加による経費軽減や集中力の持続による生産効率の向上が実現したこと。政府が推奨する働き方改革に対応できたこと。また、百貨店催事への中止も利益拡大に繋がったこと。いずれもコロナ前に深く考えなかったことで、これらを前向きに考える機会となり、成果が出たことにより、専務自身もスタッフらも自信を持つことができた。
「常日頃、スタッフが想い描いていたことが少しでも実現したことが、喜びになり、最高の励みになるということが、コロナを通じてよく理解できた。今まで手を付けなかったことに向かい合い、成果を出す方法を生み出す努力を継続しなければならない。パンプキンとして企業力がワンランク上がったような気がする」
続けて、専務は今後力を入れることと将来展望について次のように述べた。
「生産効率の向上は継続課題だが、機械化をどのように進めるのか、マンパワーとの兼ね合いをどのように調整するかを苦心している。言うまでもないことだが、今まで以上に内容を濃くしなければならない。雇用環境も今以上に厳しくなるだろう。これらを軽減する方法をコロナ禍と合わせて考えると製品冷凍に辿り着く。製品冷凍は、原材料の改良が進み、設備機器の目覚ましい進歩によって高品質の製品が提供できるようになっている。また、冷凍・冷蔵生地も格段に品質が上がっている。現在の状況は、まさに冷凍・冷蔵に切り替える絶好のチャンス。製造工程の効率化が一気に実現できると思う。勇気を出して、今までのやり方を切り崩し、新しい何かを始めたい」
将来展望は、規模の拡大に捉われず、現在の4店舗を3店舗にしてでも、中身が充実した経営をしたい。その構想が軌道に乗り安定したら、パンや食に関連した地域コミュニティが目的の小さなカフェを持ちたい。現実的な展望は、お客様に喜んでいただくため、従業員の教育と会社方針を明確に伝えること。従業員には会社とともに頑張ってもらわなければならず、諸問題を共有しながら前進したい。その結果が3店舗であり小さなカフェの具現化だと思う。イメージはほぼ完成しているので、日々の目標に落とし込んで実行するのみ」
【パンプキン】
[本店]
〒669-1535兵庫県三田市南が丘1ー50ー6、電話079-563-7391
▽全店従業員数=正社員:19名、パート・アルバイト:40名
▽本店従業員数=正社員:12名、パート・アルバイト:13名
▽営業時間=7〜18時30分
▽定休日=基本月曜日(月や祝日等により変更の場合あり)
▽駐車場=25台
▽カフェスペース=店内28席、屋外テラス席あり
▽アクセス=神戸電鉄三田線横山駅より徒歩約8分、JR宝塚線三田駅より徒歩約15分。車の場合、中国自動車道西宮北ICより国道176号線で約10分
[二郎店]
神戸市北区有野町二郎329-11、電話078-98-0528
[グリーンガーデンモール北神戸店]
神戸市北区八多町中1150グリーンガーデンモール北神戸内、電話078-952-0501
[えるむ店]
兵庫県三田市すずかけ台2-3-1えるむプラザ内、電話079-559-8878
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