亀井堂〈鳥取市〉
「亀井堂1903」をオープン
工場設備を大規模に入れ替えリニューアル

BACK

 

 

地原社長

店舗外観

店内の様子
 

看板商品のサンドイッチ

販売員の瀧さんとデニッシュ食パンなど

県道から望む店舗と工場

 1903年に創業し、今年で118年目を迎えるP亀井堂(地原忠実社長)は2月1日、工場敷地内に隣接した「ぽるとがるスリフト店」を建て替え「亀井堂1903」をオープンした。また、6月15日には工場内をリニューアルし、大規模に設備機器を入れ替えて本格稼働を開始した。

 同社は、数年前まで鳥取駅ビルや市内のスーパーマーケットで「焼き立てパンのぽるとがる」を展開していた。同店舗で販売するパン商品は、同品質だが、少し変形したり、焼成位置の都合で若干焦げのある商品などを食品ロス対策の一環として、工場に隣接したプレハブ店舗において格安販売をし、近隣住民から重宝がられていた。しかし、店舗設置から20年以上が経過し、老朽化が目立つようになった。また、約120年の歴史を有する『亀井堂』ブランドのパンを売る場所として、こころもとさを感じていたことから、市内の建設会社に相談を持ち掛けたところ、県産木材を使用した木造店舗の新築が提案された。
 「予てからSDGsへの取り組みを考えていたため、地元木材を使用することは『森林資源の循環・森林整備』に、地元企業・工務店の職人を活用することは『地方創生・活性化』に、木造建築は環境に優しく、温かみや親しみ・やすらぎが感じられる『住み続けられるまちづくり・くつろぎ空間づくり』にそれぞれ繋がると思い、提案を採択することに決めた。新店舗名は、ぽるとがる全店を撤退していることもあり、原点回帰の想いを込めて創業当時から多くの人に親しまれている『亀井堂』の社名と1903年創業を併せて『亀井堂1903(イチキューマルサン)』と命名した」と地原社長は新店舗オープンに至る経緯を話した。
 鳥取市は、福祉の町を目指していることから、店舗入口にスロープを付け、県道から見える店舗外壁には、70年以上のロングセラーで同社の看板商品「サンドイッチ」のパッケージロゴが描かれている。店内には「ぽるとがる」店舗で使用していた装飾品類も飾られている。
 新店舗オープン以降は、客層が変化し、高齢者から年齢層が30〜40歳代と若くなって裾野が広がり、売上は倍増したという。しかも、定価で売れる商品が増えてきたという。開店時間前には、来店客の車で賑わう光景は旧店舗と変わらない。鳥取東部だけでなく、県西部や県外の来店客も少なくない。
 新店舗オープンと同時に、犯罪や事故の被害者支援に役立ててもらおうと、同店舗の売上の一部を「とっとり被害者支援センター」に寄付する取り組みを始めた。
 「亀井堂1903店舗で『犯罪被害者支援商品』のシールが貼ってある『サンドイッチ』を購入すると、売上の2%がとっとり被害者支援センターに寄付されるという仕組みで、同センターへの寄付付き商品が販売されるのは県内初」と地原氏。
 新店舗の商品について、販売員の瀧桂子さんは次のように話した。
 人気のパンは「鳥取市民のソウルウード亀井堂のサンドイッチ」のほか「マイフライ」「切りあん」です。デニッシュ食パンもよく売れます。「お買い得商品」を分かりやすく並べているのでお客様に好評です。
 地原氏は、今後の店舗展開を次のように語った。
 拡大展開は考えていない。弊社商品は、昔ながらの手作り風に特化している。新しい商品でも歴史を積み重ねると歴史のある商品になる。周囲の声に翻弄されることなく、亀井堂らしいパンを充実させること。将来も「亀井堂に行けば昔ながらのパンがある」と言われ続けたい。

 続けて地原氏は、工場リニューアルの動機について次のように話した。
 5〜6年前、HACCPの認証がパン製造事業にも必要だといわれ始め出した頃、当社は約50年前に建った体育館にパン製造設備があるような工場で、これでは衛生管理ができないと思った。良い改善方法を模索する中、工場の中に個室を作ることを思い付いた。まず、フードディフェンスに基づいて、学校給食専用の部屋を設けた。その延長線上で、仕上げ・包装を個室化する中期計画を立てていたら、都合良く県・市の補助金制度が活用できることを知った。鳥取県は生産性向上の設備に、鳥取市は生産性向上設備を置く建物に対して補助金が該当し、商工会議所と協議して、計画を実行することができた。
 リニューアルした設備は、包装機(2台目)、食パンスライサー、インクジェットプリンター(消費期限表示)、食パン自動包装機・結束機、手動パックオープナー。そして、これらの機器を置く、屋根・壁・天井・床。
 また、設備更新による効果と食品製造業としての将来展望を次のように語った。
 生産性向上により省力化が達成でき、省力化部署の人材を削減せず、検品に異動させ、検品業務の充実を図った。残業時間や休日出勤がほぼなくなった。エアコンも導入し、清潔で涼しい職場環境になり、社員のモチベーションも上がった。
 さらなる生産性向上や社員のモチベーションアップを目指して、老朽化に応じて随時更新を進めるが、工場見学が何時でもできる工場にしたい。現在は、コロナ禍で工場見学が停止されているが、収束後には、工場見学を受け入れて、パン製造と学校給食における安全性のイメージアップを図りたい。
 評価は、第三者が行うもの。消費者や保護者にとって、安心感が拡大すると大きな効果が得られるため、現実的にできることを最大限に行う。そのことが、地元のパン製造業者として未来に存続できる方法だと考えている。
 物事には、変えてはいけないこと変えなければならないことがある。変えないためには、変わらなければ維持できない。現状維持ができていれば、結果として変わっている。変わらないように残そうとすれば、変わっていかなければ残れない。「暖簾を守る、社名を残す」が大原則で最終目標。

【亀井堂1903/P亀井堂】
〒680-0934鳥取市徳尾122
電話0857-22-2100、FAX0857-23-3085
▽従業員=40人
▽事業内容=パンの製造・販売、学校給食用パン・米飯加工
▽駐車場=店舗・工場敷地内に完備

前へ戻る

トンネルオーブン

包装室と包装機

仕分室