シモン本店〈福岡市中央区〉
はっきりと味の違いが判るパンを作る
今後も美味しくする研究を欠かさない

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平田社長

店舗外観
 

石窯

店内の様子

石窯焼きソフトフランス

 シモン(平田健太郎社長)は、父の平田均氏が1948年に、福岡市中央区で製パン業「一六軒」を創業した。顧客に恵まれ近隣住民に愛されたが、屋号が質屋に間違えられることから、健太郎氏の社長就任と同時に「シモン」に改称。福岡市民などから天然酵母・石窯パンの老舗ベーカリーとして親しまれている。

 2代目社長の平田氏は、1932年1月23日生まれ。来年90歳を迎える。地元の工業高校卒業後、建築家を目指し建築事務所に就職したが、父から後継になってほしいといわれ1年で退職。パンの修行をするべく福岡市内の大手パン製造会社に入社した。製造技術の習得を経て沖縄の大手パンメーカーからオファーを受け約3年製造部長として勤務。帰郷後、福岡で3年間パン製造会社に勤め、32歳でシモンに入社し父の事業を継承した。2003年、福岡市が選んだ「ものづくり技能職者」のパン作りの名人として、第一回「※博多マイスター」に認定された。毎日パン作りに励む傍ら、専門学校や講演会で講師も務めている。現役のパン製造技術者で最高齢だろう。※博多マイスター:技能職者の社会的認知度・地位の向上を目的としている。目的を達成するため、ものづくりに関して優れた技能を持ち、市民に対する技能伝承活動に積極的で、意欲のある技能職者を「博多マイスター」として認定し、その技能伝承活動を支援する事業。
 パン作りを極めようとする平田氏は、パン製造に欠かせない天然酵母に魅了された。その奥深さを追及し、酵母種の研究を重ねるため、何度も欧州に足を運び、職人や研究者を訪ね歩いて技術や原料を学んだという。その結果、様々な酵母種や小麦粉の素材を活かしてブレンドした120種類以上のパンの開発に成功した。また、美味しいパン作りに欠かせない石窯も、フランスとスペインの窯を導入して、パンの美味しさを追及している。
 パン作りの重要ポイントを平田氏は次のように述べた。
 「高級食パンを例に挙げると、使う材料は比重の大きいものを使うこと。ココナッツオイルを使うと老化が遅くなる。また、全脂粉乳、全脂練乳。砂糖は、フランスのカソナードと同等の国産品。製造原価は当然高くなるが、素材の良さは比重の大きさに比例し、比重の大きさは旨さに比例する。比重を考えてパン作りをしてほしい。出汁でも同じで、比重の大きい材料から採るとコクが違う」
 同店の製品別販売比率は、店舗が約50%、卸が約50%。卸の商品は、委託だが静岡以西のスーパーマーケット・ゴルフ場・CVSに提供している。
 「コロナ感染拡大防止の影響で年間売上が減少した。ソフトフランスの大口販売先問屋の販売数が一時的になくなり、ゴルフ場の景品等もなくなった」と平田氏。
《シモンのこだわり》
◇天然酵母の種にこだわる
 種(酵母菌)が良くないと美味しいパンは作れない。
酵母菌の培養と品種改良をして「ビール酵母」「りんご酵母」「パネトーネ乳酸菌」を生み出した。この天然酵母を使用すると、香りが良く、長く冷凍保存したあとも、買った時と同じ、元の美味しさが保てる。
◇小麦粉にこだわる
 天然酵母パンは経験に基づき、国産、フランス産、カナダ産、アメリカ産の小麦粉をパンの種類ごとにブレンドしている。一番の推奨商品は「天然酵母の食パン」。シンプルな中に果物の香りと味を感じることができる。
◇技術にこだわる
 こだわりの「天然酵母菌」と厳選した「小麦粉」を使って「石窯」で如何にパンを美味しく焼くか。その技術が美味しいパン誕生の秘訣。天然酵母はそれぞれに個性があるため、完璧なパンを作ることは非常に難しいが、それを満点に近づけるのが私たちの仕事。
◇翌日食べても美味しいパン
 天然酵母パンは、30年の研究と経験を重ねて果物の発酵種からできた天然酵母のパン。「美味しいパンはどこが違うか」そのヒミツはいつ食べても買った時と同じように美味しいこと。長く冷凍保存した後も、口に入れた時「深みのある味がしてスムーズにとける感覚」がある。その感覚にこだわっている。
 2002年、北欧風の外観、レンガ調総タイル張りにリニューアルした。理由は、元の本店建物が老朽化したため。建物・天井・床は総檜造りとし、中央部分は天井まで吹き抜け。一階が売り場と厨房で、レジの奥には、スペインから直接取り寄せてスペイン人の職人を連れてきて作らせたガス式スペイン石窯が据えられている。
 「石窯での直焼きパンのおいしさを視覚で『感じて』、食べて『満足していただく』ことをコンセプトに店づくりをした。店に入るとスペイン石窯が真正面に見え、どんな職人がパンを焼いているのかを自身の眼で確かめることにより、安心して買うことができる。しかも、石窯で焼くパンの香りが店内いっぱいに漂っている。フランスパン・食パン・食事パン・デニッシュ・菓子パンなど全ての製品を石窯で焼き上げ、売り切れ時の製品供給に備えコンベクションオーブンも併設している。石窯の焼成能力は、天板に換算すると8枚分。焼き上がりは歴然とした差があり『従来のパンの味とは違うことがはっきりと判る』という評価を得ており、遠方から買いに来てくれる顧客も少なくない」と平田氏は石窯の優位性を話した。
 石窯の直火焼きパンをすぐに食べてもらえるように、2階には15席のイートインスペースを併設している。3階の一部では、発酵種をはじめとする研究室を設け、さらにおいしいパンが提供できるよう日夜研究を続けている。また、本店南側にはパンセントラル工場があり、自然食品会社への卸商品などを製造している。

【売れ筋商品】
▽ソフトフランス[ロング(1kg)・ハーフ(1/2)]=一本一本石窯直火焼きで、誰もが見て驚く大きさが特徴。ふんわり柔らかで優しい味のソフトフランスパン。シモン不動の人気No.1商品。
▽100%レーズンパン=小麦粉と同じ量のラム漬けレーズンを使用しており、焼き立てはもちろん時間が経っても深い味わいがある。レーズンはブランデーとワインで軽く煮込むことにより食感をフワフワにし口の中にいつまでも風味が残る。
▽カレーパン=生地はモチモチでじっくり煮込んだ自家製カレーを詰め込んだ、コクのあるカレーパン。
▽天然酵母クロワッサン=10年を要してあみ出した折り込み作業でサク、パリ、ふわふわの食感を作っている。ひとつひとつがすべて手作業。▽明太フランス=博多の老舗「ふくや」の明太子を贅沢にたっぷり使用している。ソフトなフランスパンにはさむことで、明太子の食感をより味わえ、外はパリパリ、中はやわらか。明太にはマヨネーズとバターを入れることによりクリーミーな味わいを演出している。
▽大麦食パン=大麦の風味を閉じ込めたナチュラルでヘルシーなしっとりとした食パン。
▽米粉パン=米粉をα(アルファ)化して使っているのでやわらかくて美味しい。
▽ラスク=ソフトフランスをベースに作っている。さっくり感がやみ付きになる。
 平田氏は将来展望を次のように語った。
 「美味しいパンを作ることは当たり前だが、パンの売り方を考え直さなければいけないと思う。新製品を店頭に並べると、ふんだんに試食を提供し、製造者が自ら客の反応をつぶさに観察し、克明に記録して、改善点に反映させなければいけない。
 パンは、数学で、タイミングが重要。そのタイミングを時間と温度だけで推し量ることはできない。基本に立ち返り、生地に触れ、指で押さえて、凹まないタイミングを体得する。凹むと過ぎており、跳ね返ると早い。窯に入る時の生地温度は36℃。環境や気温・湿度、設備が異なるため、この基本を柔軟に変化させること。このようなパン作りができる業界になってほしい。そして、若い技術者が夢を糧に様々な困難を乗り越えてほしい」

【シモン】
《本店》
〒810-0075福岡市中央区港2-1-5
TEL092-741-6175
FAX092-751-4824
▽営業時間=6〜20時
▽定休日=第2日曜(盆・正月休み)
▽イートインスペース=9〜17時(2F/15席)
▽建物面積=約66坪、一部3階建て
▽駐車場=10台
▽従業員数=20人(正社員10人、パート・アルバイト10人)
▽来店客数=約450人/日
▽アクセス=福岡市営地下鉄空港線大濠公園駅下車徒歩約7分

《野方店》
〒819-0043福岡市西区野方1-22-17
TEL092-811-2390
▽営業時間=6〜21時
▽定休日=無休
▽駐車場=1台
▽アクセス=西鉄バス橋本バス停下車徒歩約15分

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