Bon Appetit YANAGIYA〈和歌山県御坊市〉
オーナーシェフがソムリエに合格
取得過程の気付きを人材育成に繋げる

BACK

 

 

店舗外観

ワインソムリエ呼称資格を取得した宮所氏

受験過程
 

一〜三次合格証

店舗内の様子

HeartSelection2021金賞の「塩パン」

 Pヤナギヤが展開する「Bon Appetit YANAGIYA」のオーナーシェフ宮所忠喜氏は2021年12月6日、一般社団法人日本ソムリエ協会が実施した資格認定試験に合格しJ・S・Aソムリエの呼称資格を取得した。

 宮所氏は1956年7月8日生まれ。地元の県立高校卒業後、日本菓子専門学校で1年間菓子・パンの基礎を学び、東京の洋菓子店に就職し2年間修行した。その後、神戸のビゴの店で4年間働き渡仏、1年半の間南仏とパリでの就労体験をした。27歳で和歌山に戻り、Pヤナギヤに入社。三代目社長に就任した。
 ソムリエ取得のきっかけは、フランス時代の思い出にあるという。
 「ワインとパン・チーズのある食生活だった。人々の食生活は思いの外質素だがワインとパン・チーズを欠くことがなかった。ワインとパン・チーズでこれほどまでにリッチな気分になれるとは思いもしなかった。ワインとパンの関係性と幸せな気分を日本の人たちに伝えたいと思っていた」
 続けて、資格認定試験に合格までの経緯を次のように話した。
 「試験に合格まで4年間を要した。一〜三次試験があり、2021年11月28日の三次試験に合格したという連絡が12月8日にあった。一次試験は約800頁の教科書から4択で120問が出題される筆記試験。ワインの歴史に始まり、ワインと料理の相性、ブドウの産地(国・地域)、年代、収量、地球環境の影響、日本酒に関する内容まであり、本格的な料理名も出てくる。しかも、フランス語・ドイツ語・イタリア語も理解できなければならない。しかし、和歌山にはワインを学ぶ学校がなく、独学では合格できないと思い、大阪の学校に通うことにした。学校では、志を同じにする人たちに刺激され、自分自身の環境を変えることができ、合格に繋がったと思っている。二次試験はテイスティングと論述。特定のワインに最も適した料理名を答えその理由を示すことや、クレームに対する説明などを記述する。三次試験はサービス。試験官に対して指定ワインの飲み方や産地などを説明し料理を提案する。立ち居振る舞いも対象になる。最も苦労したことは一次試験。最大の難関で勉強する以外にクリアできる手段はない」
 ソムリエとは、レストランで客の要望に応えてワインを選ぶ手助けをするワイン専門給仕人。定義は、アルコール飲料を提供する飲食サービス業従事者。近年、野菜ソムリエやタオルソムリエなど、品質の判定能力や知識などを問う資格の名称にも多く用いられている。
 一般社団法人日本ソムリエ協会(田崎真也会長)は、わが国における食文化に携わる人々の資質の向上と飲料に関する知識の普及、サービス技術の向上、飲食を提供する環境の衛生的確保などに関する事業を行い、これらの事業を通じて、人々に食文化の向上および豊かな食生活を提供し、食文化に携わる人々の社会的な向上をはかり広く社会へ貢献することを目的として設立された。
 宮所氏は、ソムリエ資格を活かして、ブラッセリーを開業しパンを軸にしたワインの提案をしたいという。  店舗展開や経営面では「食文化と同様に喜びや楽しさを伝えなければいけない。また、パンの持つ可能性を拡大させることにより、自分たちの仕事の価値が上がると考える。ソムリエ資格を直接活かすということではなく、取得過程で気付いた勉強の仕方やコミュニケーションの重要性、明確な目的意識などを教えたい。今後の目標は、何事も活かし方を見直して基礎を固め、仕事を長く継続できる人材を一人でも多く育てたい」と抱負を述べた。
 Pヤナギヤは、1925年に現社長の祖父が創業。当時は和菓子店「柳屋」だったという。柳の枝は、弱そうに見えるが折れずにしなり以外と強い。風が吹けばなびく。そのように商売も無理なくしなやかで時代に順応しながら流れるようにという想いが込められている。先代がパン製造を始めたが、スーパーマーケット開業を機に撤退。スーパーも構想通りに運ばなかった。その時、パンや洋菓子を製造・販売する業態を確立しようと思ったという。
 「Bon Appetitは、私が社長就任時に付けた。『楽しいひとときをお過ごしください』というフランス語で、ヨーロッパや南フランスで生活していた頃の楽しかったこと、美味しかったこと、感激したことをYANAGIYAで再現できたら幸せだと思った。パンや菓子を通じて、食の楽しみを提供し遊び心を忘れない楽しい店を目指している」と宮所氏。
〈YANAGIYAポリシー〉
◇笑顔と元気が一番:顧客を笑顔と元気で迎える
◇NOと言わない店:顧客から「ありがとう」と言ってもらえるように一歩先を考え行動する
◇即刻着手:すぐ行動、すぐ改善、すぐメモをする、人にどんどん会う、迷ったらGO
◇チャレンジャーであれ:失敗を恐れず、どんどん挑戦する。成功するまでやり続ける執念が大切
 商品作りのこだわりを宮所氏は「今までお客様の『こんなものがほしい』を実現してきたと思う。これからも『パンと菓子であったらいいなをカタチにする』を掲げ、可能性を求め続けたいと思っている。基本を大事にしてブレない。味はシンプルでも基本に忠実であれば必ず美味しい。基本はすべてに通じる」と述べた。
 売れ筋商品は、塩パン・サクサクショコラ・プチクロワッサン・カレーパンなど。生食パン「ひなた」は、国産小麦・バターを使用し、塩屋の塩、三温糖、生クリーム、マスカルポーネなどを配合した。専用箱も用意しプレゼントなどに最適。
 新しい取り組みとして、いちご(まりひめ:和歌山ブランド)を一人で減農薬栽培し店舗で使用しているという。
 「自分でいちごを育てることにより、食材として大切に取り扱うようになった。このような実体験を社員教育の一環にして、食べる物を大切にする精神を養いたい」と宮所氏。
 HACCPは認証を取得していないが、食品安全衛生基準を満たしている。
 宮所氏は、Bon Appetit YANAGIYAの将来展望を次のように述べた。
 「店舗は2店舗を展開している。店舗とは別に、コロナ禍で買い物に出られない高齢者に向けて山間部に焼き立てパンを届ける移動販売を行っている。本店で働いている従業員は全員焼成ができるため、それぞれを移動販売の責任者に任命して商圏を拡大することにより、店舗を構えなくても商売相手と戦わずして顧客が獲得できるため、移動販売のための焼き立てパン拠点(=焼成工場)の建設を実現したい」

【Bon Appetit YANAGIYA】
《御坊本店》
〒644-0002和歌山県御坊市薗77-7
電話0738-22-0137、FAX0738-22-0391
▽営業時間=8〜19時
▽定休日=月曜日(祝日の場合は営業)
▽駐車場=20台
▽従業員数=40人(正社員18人/パート22人)
▽アクセス=紀州鉄道紀伊御坊駅より徒歩約6分
[Bon Appetit YANAGIYA Cafe]
南フランスのカフェを思わせる開放的な雰囲気でゆったりとした空間。オープンテラスもある。
▽営業時間=モーニング:8〜11時/ランチ:11〜14時(L・O13時45分)/ティータイム:14〜18時/土日限定:8時〜10時30分モーニングバイキング
▽定休日=月曜日(祝日は営業)
[おしゃべりオーブン]
本店入口右側
▽営業時間=13〜18時
▽定休日=月・木曜日
▽商品=テイクアウトにピッタリなパフェクレープ各種、オリジナルからあげ、生生地のピザなど
[夢空間ふわり]
レンタルルーム(1階:2室、2階:4室[和室2室]):ミーティングルーム、カルチャー教室、座談会場所、ギャラリー展示室として。同店主催の料理・ケーキ・パン教室なども開催

《田辺店》
〒646-0024和歌山県田辺市学園22-7
電話0739-26-8548、FAX0739-26-9126
▽営業時間=8〜18時
▽定休日=木曜日
▽駐車場=4台
▽アクセス=JRきのくに線紀伊田辺駅より徒歩約14分

前へ戻る

牛肉たっぷりカレーパン

まりひめクロワッサン

洋菓子のショーケース