 塩バターシュガーウールパン
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 枝豆チーズ
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Boulangerie K・YOKOYAMA(横山暁之介社長)は2004年に埼玉県・南浦和にOPENした。これまで、高品質のパンを作るためにスタッフたちが熟練した技を身に付け、夢を持って働ける環境作りや国内・外での講習など従業員教育に力を入れてきた。9月1日には、長女杏奈氏への事業承継を行い、新しい「Boulangerie K・YOKOYAMA」への変容を進めている。
暁之介氏は「パンは人の心を惹きつける、魅力のある身近な食べ物。高品質のパンを作るためには熟練した技を身に付けなければならない」を基本的な考え方とし、100年続く店を目指し、幅広い顧客から喜んでもらえるように、上質のパンを求めやすい価格で提供し続けるとしている。
杏奈氏は事業承継の意気込みを次のように語った。
小さい頃から菓子作りが好きだった。料理・菓子作りの楽しさを父から教わり、パンを作る技術や知識は身近なプロに学ぶことが一番だと考え父と同じパン職人の道を歩み始めた。仕事をする上で、早い・綺麗・正確・スマートがポリシーの父。調理中の立ち振る舞いから、道具の扱い、管理、指導まで、どこをとっても所作がキレイということは私も目指すべき姿だと思っている。味以外にも、最終的な仕上がりの微妙な見極めに妥協しない姿は、顧客からは見えない部分だが、そのプロ意識が、製造から販売までの全スタッフにしっかりと伝わり「パン」を通じて、その精神が顧客に届いているのだと思っている。「パンを通してささやかな幸せを届けたい…」という父の想いと、試行錯誤の末にたどり着いたベースとなるパン生地の配合や製造方法は、流行に左右されない完成品と考えるため、今後も伝統芸術のごとく引き継ぎつつ、常に新しいことに挑戦していきたい。
《杏奈氏の挑戦》
◇事業継承で苦労している点:最近まで違う会社(店舗)で仕事をしていたため、K・YOKOYAMAの既存スタッフとコミュニケーションが少なく、突然経営者が交代することによる不安を生じさせないように配慮すべきだと思う。現スタッフの努力で今の店舗があるという感謝の気持ちをどのように表せば良いのかと、経営TOPだからといって上から目線にならないように気を付けている。
新製品開発等で今までにない商品を生み出すことにより、親子関係だけで社長になるのではないということを認知してもらおうと思っている。円滑な店舗運営と継続的発展には、コミュニケーションが最も重要だと考える。
また、経営者として考えるべきことは資金繰りなどの財務に関すること。自分自身の家族だけでなく、従業員全員とその家族の生活を良い方向に導くことなど、責任の重大さを実感しているとともに、会社の収支を常に考慮した資金の使い方をしなければならないと思うようになった。加えて、仕事の充実度や給与、労働時間等のバランスも必要だと思うなど、仕事に対する意識が逆転した。
◇新しい取り組み:売上を向上させるために「通信販売の充実」「土・日限定商品の発売」を行う。通信販売は、今まで行なっていなかったため新規で立ち上げる。土・日限定商品は、サンドイッチと焼き菓子で、今まで多客日でも限定商品を販売することがなかったことから、来店客の多い土・日に売上を伸ばす計画。
スタッフとのコミュニケーションでは、週に一度の定期ミーティングを行うほか、製造現場での直接指導を実践している。そのほかに、スタッフからダイレクトにメールやSNSが来ることも日常で「言い難いや頼み辛い」ということがないように配慮を欠かさないようにしている。
◇売れ筋商品の変化:サンドイッチの内容を大幅に変え、それに見合った価格改定を実施したが、顧客の反応が良く、高単価商品でも売れるようになった。新商品投入と同時に単価を上げるようにしている。新商品開発は、パン製造に携わる多くの人がやってみたい仕事だと思うため、年に4回程度スタッフからの提案を募集して商品化を試みようと思っている。言われたことをオペレーションするだけではなく、スタッフたちも店舗運営に参画しているという意欲を育みたい。
◇将来展望:目標として5年後の店舗リニューアル。来店客や品出しスタッフの動線を考慮し、売上向上につながる実用性の高い売場の設計変更。冷凍・冷蔵設備を充実させた通信販売の拡大。老朽設備の更新。スタッフ休憩室・更衣室等福利厚生面の拡充。などを実現したい。父が掲げている100年続くベーカリーを目指し、10年、20年と一段ずつ確実に階段を登りたい。
《暁之介氏の覚悟》
事業承継は以前から意識していたが、長女の技術レベルが向上し、スタッフたちと協力して円滑な事業が展開できると判断したため、社長交代に踏み切った。9月以降は、会長に就任し、商品のアドバイスや経営全体を俯瞰する。基本的な業務内容は大きく変わらず、長女を前面に出す体制を徐々に固めたい。但し、不測の事態が起こった場合は、全面的に後押しをする。
大前提として、世の中に必要とされること。長く継続するためには、意識改革を促進しなければいけない。そのためには、中間管理職の育成に注力し、経営を安定させること。業界特有ではなく一般的な社会人に育成することを意識的に行う。
現在の若い人は、環境や情報量が私たち世代と大きく異なることから、我々以上に仕事ができると考えるべきで「若い人はダメだ」という考え方を根本から改めること。人材・環境・人間関係をバランス良く判断する目線を養うこと。
経営者は「働いている人が希望を感じられる会社」「自分にとって良いことがあると思える職場」を整備するために努力すること。
《杏奈氏開発の新製品》
◇高級食パンシリーズ:素材にこだわりリッチな味わいに仕上げた特別な高級食パンを提案。
▽華洛[KARAKU](小倉・こし)[1斤税込700円/4枚切り厚1枚同175円]=生地半量の餡を折り込んだ、ずっしり重くほんのりバターが香るしっとりとしたあんこ食パン。耳までもっちり香ばしく、そのままでも美味しいが、バターを載せてあんバタートーストにするのも美味
▽カレ・ドール[1斤同600円/4枚切り厚1枚同150円]=しっとりリッチな生地にほんのり甘いバターを折り込んだ黄金色のデニッシュブレッド。トーストすると外はさっくり、中はバターが溶けてとろけるような食感が楽しめる
▽ロワイヤル[1斤同400円]=生クリームで仕込んだ、しっとり柔らかな食感が特徴の長時間発酵製法の生クリーム食パン。耳まで柔らかく、厚切りトーストやサンドイッチにも推奨
◇バラエティブレッド
▽しらすと枝豆のフォカッチャ=モチモチの生地にベシャメルソース、枝豆、しらす、自家製ドライトマト、ガーリックチップ添え
▽枝豆チーズ=塩茹で枝豆とグリエールチーズ、チェダーチーズのフランスパン
▽レーズンココナッツフロランタン=レーズンブレッドにヨーグルトクリームとフランボワーズ、ココナッツフロランタン添え
▽塩バターシュガーウールパン=毛糸玉のようなような見た目からSNSでも話題の「ウールパン」。シャリっ、モチっ、カリッと食感が楽しい。底はアメ状に仕上げ、バターの塩気が効いた甘じょっぱい、クセになる味わい
▽コーヒー牛乳プリンデニッシュ=自家製コーヒー牛乳プリンをサクサクのデニッシュと合わせた
【横山杏奈氏略歴】
慶應義塾大学文学部卒。学生時代4年間は大手ベーカリーで販売のアルバイト。2004年K・YOKOYAMAオープン時より販売を手伝う。2007年大手ベーカリーに入社。2010年フランス・パリの人気店「ブーランジュリー・パティスリー・レジス コラン」で3カ月修行。フランス近隣諸国を巡りパンや地方伝統菓子の見聞を広める。同年K・YOKOYAMAMに入社。2011年第20回カリフォルニア・レーズンベーカリー新製品開発コンテストインストア・リテイルベーカリー部門金賞受賞。2013〜2021年個人店リニューアルオープン等に携わる。2021年K・YOKOYAMAM専務取締役に就任
【Boulangerie K・YOKOYAMA】
〒333-0857埼玉県川口市小谷場455-1
TEL048-263-0222
▽営業時間=7〜17時
▽定休日=年中無休
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