 バゲット
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 ふすま食パン
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 柴田さんちのカンパーニュ
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Pain Prunelleは2022年11月7日、大津市街の瀬田川(国道422号)沿いに新規開業した。身体のことを考えた安心安全なハード系を提供する店として早くもリピート客を獲得している。
同店のシェフは松岡瞳氏。
「かねてからの夢であったベーカリーを開店することができた。一層気を引き締めてパン作りに向き合うとともに、これまで指導・支援していただいた多くの人たちに感謝を申し上げたい」という。
松岡氏は、大津市出身。大学では管理栄養士の資格を取得し卒業。パンの部活を通してパンにハマってしまった。就職活動はパン関連に絞り込み、神戸屋レストランに就職し東京に配属された後、埼玉県の新店舗に異動して、約2年半パン作りの基礎と接客のノウハウを学んだ。大津に戻ったが、パンの修業不足を感じ、パンのコンテストへの出場願望もあり、東京のブーランジュリー・オーヴェルニュの門戸を叩いた。オーヴェルニュ在職中の約5年間は、パンの修業とコンテスト作品制作に明け暮れた。
店名のPrunelleは、フランス語で「瞳」という意味。名前で探した訳ではなく、人の笑顔は「瞳がキラキラしている」や「元気」をイメージすることから色々な店名を候補に挙げたといい、可愛くて瞳を輝かせている人が増えてほしいという想いから店名をPrunelleに決めた。
独立願望を抱きながらパン製造業務に就いていたが、独立開業を強く意識したきっかけを次のように話した。
「2022クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリー(ベーカリー・ワールドカップ)2次予選で落選したこと。私は、クープ・デュ・モンドとカリフォルニア・レーズンベーカリー新製品開発コンテストに出場したくてパン業界に入った。レーズンコンテストでは入賞することができたが、クープ・デュ・モンドはやり残していた。MOBAC会場で戦いたくて、生活の全てをパン作りに絞り込み、トレーニングを重ね、納得がいくまでやり切ったが、最終選考の舞台に立つことは叶わなかった。すごく悔しく、目標を失ってしまい、燃え尽き症候群に化し、全てに対してやる気をなくした。生きる意味さえ疑問に思うようになった。そんな時、自分は何をしていることが楽しく、生き甲斐を感じるかを考えると、人の笑顔を見ることで、店を設けて人を笑顔にしようと発起し独立開業を目指した。もし、クープ・デュ・モンド最終選考に出場できていたならば、この店の開業はなく、多くの人の笑顔を見ることもできなかったので、結果として良かったと思っている」
立地は、準住宅地。近隣は広い敷地の邸宅が点在し、西側の山沿いは住宅地として開発が進められている。同店には高級外車でパンを買いに来る人も多く、今のところ近隣にはベーカリーが存在していない。
「オープンするまでは具体的に分からなかったが、立地条件が非常に良く、販売商品のコンセプトとベストマッチングしていると思う。東京で働いている時から休日を利用して毎月大津市に戻り店舗物件を探していたが、イメージに合う物件を見つけることができず諦めかけていた時、母親がこの店の前を通り、前に営業していた和菓子店の閉店を知らされた。偶然、店舗オーナーと親が知り合いだったことで話が急好転し、この店舗での独立開業を決めた。駐車場は絶対条件であるが、それも充分に満たしており、大津市の中心地でもなくのびのびとパン作りに打ち込めると思った」
オープン当初は、パンがこんなに早く売り切れるのかと思ったらしい。
「自分が予想していた以上にパンが売れた。少し落ち着いて、来店客がある程度絞られ、自分が売りたいと思っている商品にリピーターが増えるようになっていることから、地域に受け入れてもらえているような気がする。ハード系メインで開業して、意図のとおりにSNSでも♯ハード系を付けてくれる人も増えており、ハード系の店になりつつあることが喜ばしい」
同店の客層は、狙い通り30〜50歳代。学生は最初からターゲットにしていない。ハード系のような硬いパンは、咀嚼能力を高め、脳に刺激を与えて血液の循環を良好にするといわれているため、ハード系をさらにアピールしたいという。「経営理念」や「モットー」は、すぐにできるものではないため、現在模索中だという。
個数での売れ筋商品はクロワッサン。
「今は、どの商品も売れている。クロワッサンは多く作っているので沢山売れているが、売れ筋商品ではないと思っている。美味しいという評価を得ている売れ筋商品は、バゲットと食パン、柴田さんちのカンパーニュ。柴田さんちとは、滋賀県産無農薬小麦を生産する農家で、その全粒粉を使用しているため商品名の一部にしている。サンドイッチに使用している野菜も無農薬栽培を行っている農家から直接仕入れている」
バゲットの売上構成比は約25%。食パンは42斤焼いて毎日完売する。製造量を増やせばさらに売れるように思えるが、今のところ製造上限を決めているという。オーバーナイト製法も効率を考えて取り入れている。特に力を入れている商品は、バゲット・柴田さんちのカンパーニュ・全粒粉100。全粒粉100でもイチジクとクルミ入りは好まれるが、プレーンは思うように売れていないようだ。バケットは、土日に70本くらい焼成して完売する。昼を過ぎると買う商品がないと言われることもあるという。
衛生に関しては、管理栄養士のノウハウが役に立っている。
食品ロスの対策は、毎日全て売り切ることと、極力ビニール袋を使わないようにしていること、ゴミを少なくする社員教育を徹底していること。来店客に対しては、タッパ持参をSNSで呼び掛けている。
松岡氏は、将来展望を次のように語った。
仕事に余裕を作り、飲食店やレストランとコラボがしたい。今でも様々な業態から声を掛けてもらっているが、店舗の平準化を最優先しているためコラボには至っていない。オーヴェルニュ退職後、草津市のファーマズマーケットを見付けてボランティアに行った。そこで、無農薬野菜農家や飲食店経営者と知り合い、その人たちがコラボを誘ってくれており、その輪に参加したい。店舗数や雇用拡大の欲は特になく、常連客を対象にしたパン教室やパーティなどを主宰し、地域に密着した店舗にしたい。広い意味で地域と家族になりたい。
【Pain Prunelle】
〒520-0862滋賀県大津市平津1丁目2-11
077-572-9830
▽営業時間=8時〜売り切れ次第終了
▽定休日=水・木曜日
▽従業員数=正社員1人、パート・アルバイト6人
▽駐車場=7台
▽アクセス=京阪電鉄石山坂本線石山寺駅から徒歩約1700m/車の場合:京滋バイパス石山ICより国道422号線を南へ約5分
▽設備=デッキオーブン、コンベクションオーブン、ミキサー、ドゥコンディショナー、フリーザー、リバースシーターなど
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